LLCスイッチング電源:トランス 巻き数の決め方
鍵は飽和磁束密度の見定め
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| スイッチング・トランスの設計法を解説し,LLC方式のトランス設計手順やコア選定,巻き線構造の最適化,損失計算について詳細に説明する内容である 〈著:並木 精司〉 |
| 【出典】:[VOD/KIT/data]一緒に作る!LLC絶縁トランス×超高効率・低雑音電源 完全キット |
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LLC電源トランスの巻き数設計の基本
LLCコンバータ用のスイッチング・トランス設計では,1次巻き数の決定が重要なステップになります.1次巻き数は入力電圧,スイッチング周波数,コアの有効断面積,そして最大飽和磁束密度($B_m$)の4つの要素から計算します.今回の例では,入力電圧$V_{in}$は48V,スイッチング周波数$F$は100kHz,コアの有効断面積$A_e$は62mm$^2$,最大磁束密度$B_m$は経験的に120mT(0.12T)に設定しました.
計算式は,1次巻き数$N_p$が以下のように求められます.まず,ハーフブリッジ方式のため,1次側の最大電圧は$V_{in}/2$になります.これを踏まえて,$N_p = \frac{V_{in}/2}{4 \times A_e \times F \times B_m} \times 10^8$の式で算出し,今回の条件では約8.79ターンになります.実際の巻き数は切り上げて9ターンとしました.1次巻き数の適切な選定は,トランスの飽和を防ぎ効率よく動作させるために不可欠です.
飽和磁束密度$B_m$の見定めとその影響
飽和磁束密度$B_m$とは,鉄心の磁性材料が磁束を保持できる最大値のことです.磁束密度が$B_m$を超えると,鉄心が飽和状態となりインダクタンスが急激に低下してしまいます.これによりトランスの性能が著しく悪化し,最悪の場合は回路の動作不良を招きます.LLCトランスはプッシュプル動作の一種で,磁束は正負両方向に振れる特徴があります.したがって,磁束の変動幅$\Delta B$が大きく鉄損が増加しやすい事情があります.
設計上は,$B_m$に十分なマージンをもたせることが重要です.たとえば,一般的なフレームコアでは$B_m$は0.42ー0.45T程度ですが,実際の設計では鉄損や温度上昇を考慮して,より低い値に設定します.今回の例では0.12Tとかなり控えめに設定し,鉄心の発熱や損失を抑えています.最大磁束密度を高く設定すると,鉄損が$B_m^{2.3}$乗に比例して増加するため温度管理が難しくなります.設計の初期段階で経験に基づく$B_m$の設定が不可欠です.
巻き線構造と線径の最適化
巻き線設計ではボビンの巻き幅や巻高を活かし,電流密度を適切に保つことが求められます.1次巻き線の電流は約2.7Aで,ボビンの巻き幅は7.8mmです.単線で巻く場合の電流密度が高すぎるため,0.5TEX-Eの細い電線を2本並列巻きにし,電流密度を約4.4A/mm$^2$に抑えています.これにより温度上昇を抑制し,巻き線の信頼性を高めます.
2次巻き線は24V出力用で巻き線比は1:1,9ターンに設定しました.バイファイラ巻き(2本の電線を同時に巻く方法)を採用し,巻き数を2層で18ターン相当にしています.電線はUEW0.6を使用し,電流密度は約7A/mm$^2$になります.2次巻き線は外層に巻くため放熱が良好で,多少大きめの電流密度でも問題ありません.
巻き線の結合度も設計上の重要ポイントです.1次側で発生した磁束が漏れずに2次側に伝わるよう,巻き線は密着して巻く必要があります.ボビンの巻き幅と線径を考慮し,無駄なく巻き窓面積を活用することが効率的な磁束結合につながります.
〈著:ZEPマガジン〉参考文献
- [Onsite/KIT/data]トランス製作実習!スイッチング電源回路設計&シミュレーション,ZEPエンジニアリング株式会社.
- 低雑音&高効率!LLC絶縁トランスの定数設計法,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]Before After!ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]事例に学ぶ放熱基板パターン設計 成功への要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]小型&高出力!高効率電源設計のためのSiC/GaNトランジスタ活用 100の要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
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