[KIT]ミリ波5G対応アップ・ダウン・コンバータ

1台で送受信実験!周波数変換($6\mathrm{GHz}$ベースバンド⇔$27\mathrm{G}~43\mathrm{GHz}$)が可能な$I/Q$ディジタル変復調器




ミリ波5G対応アップ・ダウン・コンバータ mz-mmcon1の概要

これ1台でミリ波無線通信の実験が始められる

写真1に示すのは,1台でミリ波通信実験が可能な$I/Q$変調&周波数コンバータ mz-mmcon1(生産中止品.後継機は z-mmcon2

写真1 これ1台でローカル5Gなどのミリ波無線通信の実験が可能なアップ・ダウン・コンバータ mz-mmcon1(生産中止品.後継機は z-mmcon2

本キットは,$27\mathrm{G}~43\mathrm{GHz}$のRF信号を$5\mathrm{M}~6\mathrm{GHz}$のベースバンド信号に周波数ダウンしたり,逆に,$5\mathrm{M}~6\mathrm{GHz}$のベースバンド信号を$27\mathrm{G}~43\mathrm{GHz}$のRF信号に周波数アップしたりできる$I/Q$ディジタル変復調器です(図1).STM32マイコンを搭載しており,これ1台で,ミリ波を使ったディジタル送受信の実験が可能です.STM32マイコンを利用する場合のベースバンド信号の帯域は$100\mathrm{kHz}$以下です.

ミリ波対応アンテナ mz-mmAnt1と組み合わせれば,離れた2箇所での送受信実験も可能になります.さらにパソコンとベースバンド信号処理デバイス(後述のECLIPSE Z7など)を組み合わせれば,$100\mathrm{Mbps}$以上の超広帯域無線通信も可能です.

図1 ミリ波通信実験用スタータキット mz-mmcon1(生産中止品.後継機は z-mmcon2) のブロック図

5Gには次の3つの周波数バンドが割り当てられています.

  1. $3.6\mathrm{G}~4.1\mathrm{GHz}$(サブ$6\mathrm{GHz}$帯)
  2. $4.5\mathrm{G}~5.0\mathrm{GHz}$(サブ$6\mathrm{GHz}$帯)
  3. $26.6\mathrm{G}~29.5\mathrm{GHz}$(ミリ波帯)

5Gには,従来の4Gにはない2つの特徴があります.

1つは,帯域が$40\mathrm{MHz}$から$100\mathrm{MHz}$に広くなったことです.ミリ波帯を利用する5G(ミリ波5G)では,$400\mathrm{MHz}$もの帯域が割り当てられています.これだけの帯域があれば,4K/8K映像の高速撮影映像システムや臨場感あふれるVRシステムを実現できます.

もう1つ注目すべき特徴があります.NTTやKDDIなどのいわゆるキャリア以外の自営企業が独自に通信回線を構築できる「ローカル5G用バンド」が割り当てられた点です.現在利用できる周波数バンドは一部ですが,今後,工場や農場などでIT化を進めたい機関や企業の実証実験が増えてくることでしょう.

スペック

  1. 送受信周波数:$27.2\mathrm{G}~42.995\mathrm{GHz}$
  2. 送受信用コネクタ:$2.92\mathrm{mm}$
  3. 送信出力:$+10~-40\mathrm{dBm}$
  4. 送信変換ゲイン:$+23\mathrm{dB}$
  5. 受信入力:$-9\mathrm{dBm}$以下
  6. 受信変換ゲイン:$17\mathrm{dB}$
  7. IF帯域:$1\mathrm{G}~6\mathrm{GHz}$
  8. ベースバンド帯域:$5\mathrm{M}~6\mathrm{GHz}$
  9. PLL周波数範囲:$6.8\mathrm{G}~10.75\mathrm{GHz}$
  10. DC電源入力:$6\mathrm{V},1.5\mathrm{A}$
  11. 基板サイズ:$W=100\mathrm{mm},D=74\mathrm{mm},H=1.6\mathrm{mm}$

使用例

キット単体で送受信

mz-mmcon1(生産中止品.後継機は z-mmcon2) は,A-DコンバータとD-Aコンバータを内蔵するSTM32マイコンを搭載しているため,スタンドアロンでも送受信できます(図2).ただし,ベースバンド信号の帯域は$100\mathrm{kHz}$以下に限られます.

D-Aコンバータでベースバンド信号($100\mathrm{kHz}$)を出力し,これをミリ波周波数にアップしてアンテナからRF信号を送信します.この信号を別のアンテナで受信したら周波数ダウンし,A-Dコンバータでベースバンド信号を再生します.

図2 mz-mmcon1(生産中止品.後継機は z-mmcon2) の使い方その① スタンドアロンのミリ波通信実験システム(帯域$\mathrm{100kHz}$)

16MHz以下のリアルタイム狭帯域通信の実験

図3に示すのは,帯域$100\mathrm{k}~16\mathrm{MHz}$のアナログ信号をフルディジタル信号処理できるSDRトランシーバ mz-SDRBlockHF2を使ってベースバンド信号の生成と変調を行う接続例です.mz-SDRBlockHF2は,FPGA,高速A-Dコンバータ,D-Aコンバータを搭載したSDRボードです.

FPGAには,信号処理に必要な回路ブロックが作り込まれていて,パソコン上の専用アプリケーションを利用して,接続やパラメータを設定するだけで,カスタムなSDR送受信機を構成できます.FPGAコンフィグレーションは不要です.

図3 mz-mmcon1(生産中止品.後継機は z-mmcon2) の使い方その② 32MSPSのFPGA SDRトランシーバ “mz-SDRBlockHF2”を使ったミリ波通信実験システム(帯域$16\mathrm{MHz}$)

100MHz超の広帯域通信の実験

図4に示すのは,$100\mathrm{MHz}$以上の帯域の$I/Q$ベースバンド信号を生成したり復調したりできるECLIPSE Z7(Digilent製)とmz-mmcon1(生産中止品.後継機は z-mmcon2) の組み合わせです.ECLIPSE Z7は,ケース,A-Dコンバータ,D-Aコンバータボード込みで10万円以下です.Linuxも走るARM Dual Cortex-A9を内蔵するZynq-7020を搭載しています.

図4 mz-mmcon1(生産中止品.後継機は z-mmcon2) の使い方その③ デュアルの高速A-D/D-AとFPGAを搭載したECLYPSE Z7を使ったミリ波通信実験システム(帯域$100\mathrm{MHz}$)

6GSPSの超広帯域通信の実験

図5に示すのは,サンプリング周波数が$6\mathrm{GSPS}$のA-DコンバータとD-Aコンバータを内蔵するFPGA“RFSoC(ザイリンクス)”を搭載したSDRユニット SIMT6000(ADR Communication製)と組み合わせた例です.

写真2は,多チャネル同時送受信が必要なローカル5G基地局を想定して,リアルタイム動画を$28\mathrm{GHz}$を使って伝送したときの実験のようすです.

図5 mz-mmcon1(生産中止品.後継機は z-mmcon2) の使い方その④  SIMT6000(ADR Communication製,台湾)使ったミリ波通信実験システム(帯域$6\mathrm{GHz}$)
写真2 図5のミリ波SDRシステムを使って動画を伝送しているところ

詳しい使い方がわかる技術解説記事とマニュアル

[動画セミナ] ローカル5G/6G開発の実際と始め方

(a)東京都立大学 ローカル5G環境の概要と活用の方向性 (b)ローカル5Gおよび6Gに向けたMIMOハードウェア装置と評価法 (c)ローカル5G基地局のハードウェア開発
(d)27G~43GHzミリ波5G用UP/DOWNコンバータ Radiun-mmcon1 (e)ミリ波5Gアンテナ開発の現状