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2026年01月09日号

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大振幅と小振幅で全然違う:増幅回路の周波数特性

実験キットとパソコンで学ぶアナログ電子回路教室

スルーレート特性により,出力振幅が大きいと周波数特性が制限され,特にAD8506では13mV/μsのスルーレートが影響を及ぼすことが確認された
画像クリックで動画を見る.または記事を読む [著]石井 聡
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増幅回路のスルーレート特性とは

OPアンプの動作には「スルーレート」と呼ばれる重要な特性があります.スルーレートは出力信号の振幅変化速度の最大値を指し,単位は一般的にV/μsで表されます.増幅回路の周波数特性を考える際,通常の小信号周波数特性とは異なる視点が必要です.小信号領域ではOPアンプが理想的に動作しても,大振幅信号になるとスルーレートの制限により出力波形がひずむことがあります.

例えばAD8506というOPアンプのスルーレートは約13mV/μsと非常に低速です.これにより大振幅の信号を高周波で増幅しようとすると,出力波形が本来の正弦波ではなく三角波のように変形します.これはOPアンプが信号の変化に追従できず,波形の立ち上がりや立ち下がりが制限されるためです.

実験によるスルーレートの影響の確認

実験では非反転増幅回路でゲイン2倍(6dB)に設定し,入力信号に2VP-Pを加えました.周波数を100Hzにした場合,出力は理想的な波形を示します.ところが3kHzに上げると,出力波形は三角波状に変わりました.これは3kHzの周波数が小信号帯域幅43.4kHzより十分小さいにも関わらず,スルーレート制限のために正しい波形が得られなかったためです.

測定結果から上昇時のスルーレートは約22.8mV/μs,下降時は約12.6mV/μsと判明しています.これはデータシート値の13mV/μsに近い値です.大振幅信号の変化速度がスルーレートを超えるために,波形のひずみが生じることが明確に示されました.

フルパワー帯域幅とスルーレートの関係

スルーレート制限を受けずにひずみなく出力できる最大周波数帯域を「フルパワー帯域幅(FPBW)」と呼びます.AD8506の場合,スルーレート13mV/μsから計算すると,出力振幅4VP-PでのFPBWは約1kHzです.これより高い周波数ではスルーレート制限が顕著に現れます.

入力振幅を小さくして0.2VP-P(出力0.4VP-P)にすると,FPBWは10kHzまで拡大し,波形のひずみはほとんど見られません.小振幅信号ではスルーレートの影響が小さいため,周波数特性は小信号帯域幅に近づきます.

このように,増幅回路の周波数特性は入力信号の振幅によって大きく変化します.大振幅信号ではスルーレートが周波数特性のボトルネックとなり,出力波形のひずみを引き起こします.小振幅信号ではスルーレートの影響が小さく,理想的な増幅が可能です.

  1. スルーレートは出力振幅変化の最大速度制限であり,単位はV/μsで表す
  2. 大振幅信号ではスルーレート制限により出力波形がひずみ,三角波状になることがある
  3. フルパワー帯域幅はスルーレート制限を受けずにひずみなく動作できる最大周波数
  4. 小振幅信号ではスルーレートの影響が小さく,小信号帯域幅に近い特性を示す
〈ZEPマガジン〉

動画を見る,または記事を読む

参考文献

  1. [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 初歩の電子回路設計,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【A-D/D-Aコンバータの使い方】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【差動信号とその周辺回路設計技術】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD]高精度アナログ計測回路&基板設計ノウハウ,ZEPエンジニアリング株式会社


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