MOSFETはマイコンで直駆動できない
4Aゲート・ドライバでPWM駆動してみた
ゲート抵抗と波形制御
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図1 MOSFETのゲートは電荷を蓄える容量性負荷であり,ON/OFFのたびに大きな電流を必要.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[講師]善養寺 薫(ディスクリテック) 詳細:[Webinar]実験キットで学ぶ初歩の電子回路設計 |
MOSFETは電力スイッチング素子として広く使われていますが,マイコンのGPIOから直接ゲートを駆動するのは難しいです.MOSFETのゲートは電荷を蓄える容量性負荷であり,ON/OFFのたびに大きな電流を必要とします.特に高速PWM駆動では,ゲートの充放電電流が瞬間的に数Aに達します.マイコンの出力ポートは一般的に20m~40mA程度しか流せないため,ゲートの充電が追いつかず,スイッチングが遅れて損失が増加します.
また,ゲート電圧が中途半端な値に留まると,MOSFETが半導通状態となり,ドレイン‐ソース間に電流が流れ続けて発熱します.このため,MOSFETを効率よく駆動するには,専用のゲート・ドライバICを使用してゲート電流を十分に供給する必要があります.
4Aゲート・ドライバによるPWM駆動
今回の実験では,最大4Aを瞬時に出力できるゲート・ドライバICを用いてMOSFETをPWM駆動しました.このICは短時間に大電流を出し入れできるため,ゲート電圧を高速に立ち上げ・立ち下げることができます.これにより,スイッチング損失の低減や発熱抑制が可能です.PWM周波数は1Hzから1MHzまで可変であり,LED負荷を用いた可視的な実験でもその効果を確認できます.
構成は次のようになります.
- 電源ライン(5V)とLEDを直列接続
- LEDのカソード側にMOSFETのドレインを接続
- MOSFETのソースをグラウンドに接続し,ゲートをゲート・ドライバ経由で制御
PWMデューティ50$\%$,周波数1Hzで点滅を行うと,MOSFETがスイッチとして1秒間隔でLEDをON/OFFします.この際,ゲート・ドライバICが瞬時に電流を供給するため,波形が明瞭で安定した点灯が得られます.
ゲート抵抗と波形制御
高速スイッチングは効率向上に寄与しますが,$dV/dt$が大きくなるとノイズ源にもなります.そのため,ゲートとドライバの間に抵抗$R_G$を入れ,立ち上がり・立ち下がりを制御します.$R_G$の値は10~51$\Omega$程度が一般的です.抵抗を大きくするとスイッチングが緩やかになり,EMIノイズの低減やデバイス保護に有効です.
また,ゲート電圧が浮いて不定状態にならないよう,抵抗$R_{G2}$(10k~1M$\Omega$)でグラウンドへ引き下げる設計も行われます.これにより,ノイズで誤動作するリスクを防ぎます.
ゲート・ドライブ設計の要点
- ゲート電流を十分に供給できるドライバICを使う
- ゲート抵抗$R_G$で立ち上がり・立ち下りを制御
- プルダウン抵抗$R_{G2}$でゲート電位を安定化
- PWM周波数とデューティ比を適切に設定
これらを踏まえたゲート駆動設計により,MOSFETの発熱を抑えつつ,高効率で安定したPWM制御が実現できます.マイコン出力だけで直接駆動する場合に比べ,波形の再現性やスイッチング速度が格段に向上する点が実験で確認できました.
〈著:ZEPマガジン〉参考文献
- [VOD]高速&エラーレス!5G×EV時代のプリント基板&回路設計 100の要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD] Before After! ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】/【IoT・無線・通信編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [Book/PDF]デシベルから始めるプリント基板EMC 即答200,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]ポケット・スペアナで手軽に!基板と回路のEMCノイズ対策 10の定石,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]事例に学ぶ放熱基板パターン設計 成功への要点,ZEPエンジニアリング株式会社.