高効率化したいなら!不連続モードは重要な選択肢


周期一定の臨界動作制御で!昇圧コンバータを例に解説

不連続モードで高効率を狙った昇圧コンバータ

図1 スイッチング電源は,周期一定で臨界点近傍の動作を維持すれば,不連続領域でも安定な制御が可能であり,制御回路を複雑化せずに高効率が得られる.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[講師]田本 貞治
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スイッチング電源の高効率化を検討する際,昇圧コンバータにおける動作モードの選定は重要です.電流連続モード(CCM)ではスイッチング損失を抑えやすい一方で,低負荷時の効率が低下します.これに対して電流不連続モード(DCM)は,軽負荷時でもスイッチング素子のターンオン損失を小さく抑えられるため,高効率化に適しています.

周期一定制御と臨界モードの関係

DCMではインダクタ電流がスイッチング周期の途中でゼロになります.周期を一定とした場合,負荷電流が増えるとインダクタ電流のピーク値が上昇し,やがて連続モードに近づきます.その境界点が臨界モード(CrM)です.臨界モードではインダクタ電流がちょうどゼロになる瞬間に次のスイッチングが開始し,導通損失とスイッチング損失のバランスがよい動作状態です.

今回の制御では,周期一定で臨界点近傍の動作を維持するように設定しています.これにより,不連続領域でも安定な制御が可能であり,制御回路を複雑化せずに高効率を得ることができます.

電流モード制御による安定化

昇圧コンバータのLCフィルタは本来2次遅れ系の応答をもちます.電流モード制御を導入すると,電流ループによって1次遅れ系として扱うことができ,位相遅れが90°以内に収まります.結果としてPI制御器を用いた安定な制御設計が可能です.

回路ではインダクタ電流を電流検出抵抗や電流センサで検出し,基準電圧との誤差を演算増幅器で処理します.この出力をコンパレータで比較し,スイッチング素子のON/OFFを制御します.一定周期のクロック信号で動作を開始し,インダクタ電流が演算出力を超えるとトランジスタをオフするしくみです.これにより電流が自然減衰し,再び次周期のパルスでオン動作を繰り返します.

多相化によるリプル低減

3並列昇圧コンバータでは,各相を120°ずらして動作させることで入力電流リプルを低減します.各相のインダクタンスは同一値が望ましく,電流バランスを保つことが安定動作の鍵です.各スイッチング信号はRSフリップフロップと遅延回路を用いて生成し,同時オンを防ぐ構成とします.

  1. 位相ずらし用のクロックを120°と240°で遅延させる
  2. 遅延パルスを微分し,各相のトリガ信号とする
  3. RSフリップフロップにより確実に交互動作を維持する

この方式により,周期一定の不連続モードでも電流干渉を抑え,出力電圧と電流を安定に制御できます.電流が低下した場合でも制御ループが破綻せず,臨界モードを意識した高効率設計が実現できる構成です. 〈著:ZEPマガジン〉

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参考文献

  1. [VOD]Before After!ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】/【IoT・無線・通信編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. [VOD]Before After!ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD/KIT/data]一緒に作る!LLC絶縁トランス×超高効率・低雑音電源 完全キット,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD]高速&エラーレス!5G×EV時代のプリント基板&回路設計 100の要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD] Before After! ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】/【IoT・無線・通信編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  6. [Book/PDF]デシベルから始めるプリント基板EMC 即答200,ZEPエンジニアリング株式会社.
  7. [VOD/KIT]ポケット・スペアナで手軽に!基板と回路のEMCノイズ対策 10の定石,ZEPエンジニアリング株式会社.
  8. [VOD]事例に学ぶ放熱基板パターン設計 成功への要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
  9. [VOD]Pythonで学ぶ マクスウェル方程式 【電場編】+【磁場編】,ZEPエンジニアリング株式会社.