クルマ向け超低硬度TIM:大型電子部品の放熱


形状さまざま!インダクタやキャパシタの冷却

クルマ向け超低硬度TIMの役割

図1 筐体との接触面が不均一になる凹凸のある電子部品には,超低硬度TIMを活用すれば,柔らかいシートが部品表面に密着し,効率的に熱を筐体に伝達できる.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[著]国峯尚樹
詳細[VOD]高効率電源&インバータ設計のための超高速トランジスタGaN/SiC活用術100

大型電子部品や凹凸のあるインダクタ,キャパシタでは,筐体との接触面が不均一になることがあります.超低硬度TIMを活用すると,柔らかいシートが部品表面に密着し,効率的に熱を筐体に伝達できます. 密閉筐体では,部品どうしが接触していないと放熱が不十分となり,内部温度が上昇します.ファンで筐体外側を冷却しても,接触が取れていない部品は冷却されません.

TIM適用の実装事例

インダクタやキャパシタの冷却では,部品形状に合わせてTIMを加工する必要があります.海外の車載機器では,TIMをカットして不要部分を除き,熱を逃がす部分だけに密着させる設計が行われています.アルミ電解キャパシタでは,上面からTIMで放熱することでもっとも効率よく冷却できます.ドーナツ型TIMを利用することで,防爆弁の機能を保持しつつ熱を逃がす工夫がされています.

熱設計とThermocalcの活用

ThermocalcはExcelベースの熱設計計算ツールで,基板や筐体の熱挙動をシミュレーションできます.密閉筐体内の部品温度を予測し,必要な放熱手段を検討する際に使用されます.熱回路網法を用いて,部品の配置やTIMの厚み,熱伝導率を考慮して温度分布を計算します.

実装上の検討ポイント

  1. 部品配置:FETやインダクタ,キャパシタを筐体に壁付けし,熱を直接伝達する
  2. TIM厚み:部品上面に2㎜厚,熱伝導率3W/mKのTIMを設ける
  3. 筐体との接触:部品裏面側にもTIMを配置し,筐体側に肉盛を設けて隙間2㎜程度で放熱
  4. 冷却効果:部品温度は壁付けとTIMにより122℃程度まで低減
  5. 部品形状対応:背の高い部品や凹凸のある部品も柔らかいTIMで密着

自然空冷だけでは基板温度が高くなり,完全壁付けによって筐体に熱を逃がすことが重要です. 部品周囲に適切な放熱空間を確保しつつ,TIMを介して筐体へ熱を伝達する設計が求められます. これにより,小型密閉機器でも部品表面温度を許容範囲内に制御できます.

多様な部品形状への対応

インダクタやキャパシタのように平らでない部品も,柔らかいTIMを用いることで筐体と接触させて放熱可能です.車載インバータやモータ・コントローラでは,各部品に適切にTIMを配置し,背の高い部品は逃げる設計が採用されています.この手法により,放熱効率を確保しつつ,部品の安全性や機能を損なわない冷却が実現されます.

〈著:ZEPマガジン〉

動画を見る,または記事を読む

参考文献

  1. [Book/PDF]デシベルから始めるプリント基板EMC 即答200,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. [VOD] Before After! ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】/【IoT・無線・通信編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD/KIT]ポケット・スペアナで手軽に!基板と回路のEMCノイズ対策 10の定石,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [KIT]ミリ波5G対応アップ:ダウン・コンバータ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD/KIT]GPSクロック・ジッタ・クリーナ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  6. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【差動信号とその周辺回路設計技術】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  7. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【A-D/D-Aコンバータの使い方】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  8. [VOD]事例に学ぶ放熱基板パターン設計 成功への要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
  9. [VOD]Gbps超 高速伝送基板の設計ノウハウ&評価技術,ZEPエンジニアリング株式会社.