プリント・パターンの曲げ方と反射


高周波対応シミュレータ Qucsで学ぶアナログ電子回路 超入門

「直角曲げ」vs「角を切り落とした曲げ」

図1 角を切り落とした曲げのリターン・ロスは直角曲げに比べて全帯域で約10dB改善される.画像クリックで動画を見る.または記事を読む

高周波回路や高速ディジタル回路の設計では,プリント・パターンの曲げ部が信号伝送に大きな影響を与えます.直角に曲げると信号が曲げ角で反射してしまうため,曲げの角を切り落とすか曲線で接続することが基本的な設計手法です.ここでは直角曲げと角を切り落とした曲げの違いを,シミュレーション結果を元に解説します.

直角曲げの影響

QucsStudioを使用し,曲げを1つ設けたプリント・パターンの反射特性をシミュレーションしました.パターン幅$W=1$mm,特性インピーダンス$50Ω$に調整したマイクロストリップ線路を対象としています.直角曲げの場合,Sパラメータ$S_{11}$のリターン・ロスは6GHz以下で20dBを超えており,反射係数は1/100以下です.

数GHz以下の帯域では直角曲げの影響は小さく,そのまま使用しても大きな問題はありません.しかし曲げが複数存在すると反射の影響が累積するため,設計上の注意が必要です.急な曲がり角があると,信号がスムーズに進めず反射が増加することがイメージできます.

角を切り落とした曲げの効果

角を切り落とした曲げを同様の条件でシミュレーションすると,リターン・ロスは直角曲げに比べて全帯域で約10dB改善されます.これは反射が1/10に低減することを意味します.曲げ部を滑らかにすることで信号の進行方向が妨げられず,インピーダンス不整合による反射を効果的に抑えられます.

  1. 直角曲げは数GHz以下では問題が少ないが,複数箇所では累積的に影響する
  2. 角を切り落とすことで反射を1/10に低減できる
  3. パターン幅$W$と特性インピーダンス$50Ω$を確保することが基本
  4. 高周波回路では曲線や切り落としを用いた曲げ設計が推奨される

プリント・パターンの曲げ部設計では,直角曲げと角を切り落とした曲げの違いを理解することで,高周波信号の反射を最小化できます.シミュレーションを活用して設計条件を確認することが重要です.

〈著:ZEPマガジン〉

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参考文献

  1. 5G時代の先進ミリ波ディジタル無線実験室[Vol.8 初めての28GHzミリ波伝搬実験]ZEPエンジニアリング株式会社
  2. 高感度受信!ソフトウェア無線機の心臓部“Root-Raised Cosine Filter”の設計ZEPエンジニアリング株式会社
  3. [VOD]Pythonで学ぶ マクスウェル方程式 【電場編】+【磁場編】ZEPエンジニアリング株式会社
  4. [VOD]高速&エラーレス!5G×EV時代のプリント基板&回路設計 100の要点
  5. [VOD/KIT]ポケット・スペアナで手軽に!基板と回路のEMCノイズ対策 10の定石
  6. [VOD]Gbps超 高速伝送基板の設計ノウハウ&評価技術
  7. [VOD/KIT]3GHzネットアナ付き!初めてのIoT向け基板アンテナ設計,ZEPエンジニアリング.
  8. [VOD/KIT]3GHzネットアナ付き!RF回路シミュレーション&設計・測定入門,ZEPエンジニアリング.