マイクロストリップ線路はインダクタンスとキャパシタンスで構成されている


高周波対応シミュレータ Qucsで学ぶアナログ電子回路 超入門

だから平坦な通過特性が得られる

図1 マイクロストリップ線路は,高周波では単なる導体パターンではなく,インダクタンス$L_P$とキャパシタンス$C_P$が組み合わさった分布定数回路として動作.画像クリックで動画を見る.または記事を読む

マイクロストリップ線路は,高周波では単なる導体パターンではなく,インダクタンス$L_P$とキャパシタンス$C_P$が組み合わさった分布定数回路として動作します。これらの要素は相互に影響し合い,特定の周波数範囲で通過特性を決定します。シミュレーションでは,この線路を等価回路に置き換えることで,その挙動をより直感的に把握できます.

等価回路モデルの考え方

等価回路は,先に求めた$L_P$とキャパシタンス$C_P$(または$C_{P\alpha}$)から構成されます。マイクロストリップ線路は入出力が対称であるため,インダクタンス$L_P$を2つに分割し,その間にキャパシタンスを配置します。この構成により,信号経路全体が左右対称なT型回路として表されます。対称性を保つことは,反射の低減と通過帯域の安定化に寄与します.

通過特性の特徴

シミュレーション結果では,約2GHzを境に減衰が急激に増加するローパスフィルタ(LPF)の特性が現れます。1.5GHz以下の領域では,通過特性が平坦であり,入力信号がほとんど減衰せずに出力へ伝達されます。この平坦な帯域は,インダクタンスによる高周波側の遮断作用と,キャパシタンスによる電界結合の補償効果が釣り合うことで実現されます.

設計上の要点

  1. 線路の長さと幅の比率を適切に設定し,$L_P$と$C_P$のバランスを取る
  2. 基板の比誘電率$\epsilon_r$を把握し,電界分布を予測する
  3. 伝送線路シミュレータで周波数応答を確認し,通過帯域の平坦性を評価する
  4. インダクタ分割による対称構成を保ち,反射損失を最小化する

このように,マイクロストリップ線路に含まれる$L$と$C$の分布特性は,信号の周波数応答を決定する重要な要素です。構造的なパラメータを制御することで,意図した周波数帯域でのフラットな通過特性を得ることができます.

〈著:ZEPマガジン〉

動画を見る,または記事を読む

参考文献

  1. 5G時代の先進ミリ波ディジタル無線実験室[Vol.8 初めての28GHzミリ波伝搬実験]ZEPエンジニアリング株式会社
  2. 高感度受信!ソフトウェア無線機の心臓部“Root-Raised Cosine Filter”の設計ZEPエンジニアリング株式会社
  3. [VOD]Pythonで学ぶ マクスウェル方程式 【電場編】+【磁場編】ZEPエンジニアリング株式会社
  4. [VOD]高速&エラーレス!5G×EV時代のプリント基板&回路設計 100の要点
  5. [VOD/KIT]ポケット・スペアナで手軽に!基板と回路のEMCノイズ対策 10の定石
  6. [VOD]Gbps超 高速伝送基板の設計ノウハウ&評価技術
  7. [VOD/KIT]3GHzネットアナ付き!初めてのIoT向け基板アンテナ設計,ZEPエンジニアリング.
  8. [VOD/KIT]3GHzネットアナ付き!RF回路シミュレーション&設計・測定入門,ZEPエンジニアリング.