高精度計測に欠かせない!低雑音化信号処理アルゴリズム「ノイズ・シェーピング」
計測のための24ビット$\Sigma \Delta$型A-Dコンバータ活用
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| 本稿では,1次ΣΔ変調器の基本構成と動作を解説し,ノイズ・シェーピングやディジタルLPFによる量子化ノイズの低減手法について詳述する 〈著:石井 聡〉 |
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高精度計測に不可欠な低雑音化信号処理アルゴリズム「ノイズ・シェーピング」
高精度のアナログ信号計測では,信号に混入する雑音をいかに抑えるかが重要になります.特に微小信号の計測では,量子化ノイズが精度を制限する要因となるため,このノイズを効果的に低減する技術が求められます.その1つがノイズ・シェーピングと呼ばれる信号処理アルゴリズムです.ノイズ・シェーピングは量子化ノイズのエネルギを周波数領域で高い周波数側に押しやることで,目的の低周波数帯域の雑音を低減し,高い分解能を実現します.特にΣΔ型ADC(アナログ-ディジタルコンバータ)において,この技術は欠かせません.
24ビットΣΔ型A-Dコンバータの基本構成と動作
24ビットの高分解能ADCには,ΣΔ変調器が用いられています.ここでは,もっとも基本的な1次のΣΔ変調器に焦点をあてます.1次ΣΔ変調器は入力アナログ電圧から帰還経路の1ビットDAC出力を差し引き,その差分を積分器に通します.積分器の出力はコンパレータで2値化され,1ビット・データとして出力されます.この1ビット出力は帰還され,DACの電圧設定に利用されます.このループ構造により,量子化誤差を高周波数成分に押しやる動作が実現されます.これがノイズ・シェーピングの本質です.
ΣΔ変調器の出力は1ビットのシリアル・データ列であり,単一サンプルの情報は意味をもちません.多数のサンプルを平均化することで,入力信号の大きさが復元されます.後段にはディジタル・ロー・パス・フィルタ(LPF)が配置され,高周波数に押しやられた量子化ノイズ成分を除去します.このLPFは,1ビット・データを目的のビット幅に拡張して演算し,24ビットの分解能を作り込みます.さらに間引き処理(デシメーション)により,サンプリングクロックより遅い更新速度で出力が得られます.
ノイズ・シェーピングのしくみと数式による理解
ノイズ・シェーピングは,量子化ノイズの周波数分布を制御する技術です.1次ΣΔ変調器の動作を数式で表すと,入力信号に対してラッチ出力は量子化ノイズが加算されたものとみなせます.量子化ノイズは単なる誤差であり,その伝達関数は「微分回路」に相当し,低周波数帯域でノイズがキャンセルされ,高周波数帯域にノイズが押しやられます.
具体的には,z変換を用いたディジタル領域のブロック線図で表現でき,信号の伝達関数は遅延系で素通しとなり,量子化ノイズの伝達関数は1から1サンプル遅延の項を引いた形になります.これにより,低周波数成分では量子化ノイズが抑制され,高周波数成分に集中します.高次のΣΔ変調器ではこの効果がより強力になりますが,1次構成の理解が基礎になります.
LTspiceなどのシミュレーションで確認すると,入力電圧の大きさに応じて1ビットシリアル・データ列のHとLの比率が変化し,このビット列の平均値が入力信号に対応しています.また,FFT解析により量子化ノイズ成分が高周波数側に分布していることが視覚的に確認できます.
- 1次ΣΔ変調器は入力信号とDAC出力の差分を積分し,コンパレータで2値化する
- 出力された1ビット・データ列は帰還され,量子化ノイズが高周波数成分に押しやられる
- 後段のディジタルLPFとデシメーション処理により,高分解能のディジタル信号が得られる
このように,ノイズ・シェーピングは高精度計測を実現するための重要な技術です.特に24ビットのΣΔ型ADCにおいて,高速サンプリングとフィードバック・ループ構造,および後段のディジタル処理が組み合わさることで,微小信号の高精度なディジタル化が可能になります.
〈著:ZEPマガジン〉参考文献
- [VOD/Full KIT/data]USBマルチ測定器付き!実測とシミュレーションで学ぶアナログ回路設計,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 初歩の電子回路設計,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【A-D/D-Aコンバータの使い方】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【差動信号とその周辺回路設計技術】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]高精度アナログ計測回路&基板設計ノウハウ,ZEPエンジニアリング株式会社













