コイルやキャパシタの放熱に!超やわらか放熱シート
高効率電源&インバータ設計のための超高速トランジスタGaN/SiC活用術100
|
|---|
| 超柔らか放熱シートは,インダクタやキャパシタなどの大型部品の放熱に最適で,硬度による熱伝導率の違いがTIM選定に影響を与える 〈著:国峯 尚樹〉 |
| 【出典】:[VOD]高効率電源&インバータ設計のための超高速トランジスタGaN/SiC活用術100 |
| 画像クリックで動画を見る.または記事を読む |
超やわらか放熱シートの特徴と役割
インダクタやキャパシタなどの大型部品は形状に凹凸が多く,従来の硬い放熱材料では接触面が十分に確保できず放熱効率が低下しやすいです.そこで注目されているのが超やわらか放熱シートです.柔軟性に優れたこのシートは部品表面の凹凸に密着しやすく,熱伝導経路を確保して効率的な熱移動を実現します.特に車載インバータやパワー・デバイスの放熱対策に効果的であり,放熱板との間の熱抵抗を低減させる役割を担います.
柔らかい放熱シートは圧力をかけることで厚みが減少し,界面接触熱抵抗を小さくできる点が大きな特徴です.接触圧力が増すと凹凸部が押しつぶされるため,熱伝導パスがより密になり,部品から放熱板へ熱を効率よく伝えられます.こうした特性により,放熱シートは単なる絶縁材ではなく,熱管理の重要な要素として機能しています.
硬度と熱伝導率の関係と熱抵抗低減メカニズム
放熱シートの性能を左右する要素に硬度があります.低硬度のシートは圧力を加えると厚みが薄くなり,熱抵抗が低下します.シートの熱伝導率は素材の物性に近い値を示し,接触熱抵抗が小さいため全体の熱抵抗が減少する傾向です.厚みと熱抵抗の比から計算される等価熱伝導率は,圧力の増加に伴いわずかに低下することがありますが,基本的に熱抵抗の改善効果が顕著です.
一方,高硬度の放熱シートは圧力をかけても厚みがほぼ変わりません.界面熱抵抗が圧力の増加により低減するため,接触熱抵抗を含めた熱伝導率は上昇傾向になります.ただし素材自体の熱伝導率には及ばず,界面の熱抵抗が依然として全体の熱抵抗に影響を与えます.硬度の異なるシートでは熱抵抗低減のメカニズムが異なるため,用途に応じて適切な硬度のTIM(Thermal Interface Material)を選定する必要があります.
車載機器におけるTIMの活用事例
近年,パワー・デバイス以外の車載部品でも熱対策の重要性が高まっています.インダクタやキャパシタ,バッテリなどの大型部品は発熱量が多く,放熱性能の向上が求められます.超低硬度の放熱シートを採用することで,凹凸のある部品表面と筐体の間に密着させ,熱を効率的に移動させる設計が増えています.
例えば,トヨタのプリウス4世代目では1.5kWのACインバータに厚みのある低硬度シートを使用し,部品の熱を放熱板に効果的に伝えています.アウディe-Tronのゲート・ドライバでは軟らかいTIMを用いてアルミ板に放熱し,背の高い部品を避けた設計を採用しています.ウォータポンプ用インバータでも基板裏面からTIMを介して放熱し,穴あき構造の熱経路設計を実現しています.
また,アルミ電解キャパシタの放熱では上部の防爆弁を避けるためにドーナツ型の放熱シートが使われています.これは熱を逃がしやすい設計でありながら安全性を確保する工夫です.こうした具体例は放熱シートの柔軟性と形状自由度が多様な車載機器の熱設計に貢献していることを示しています.
- 放熱シートの硬度は熱抵抗低減のメカニズムに影響する
- 低硬度シートは厚みの圧縮によって熱抵抗が下がる
- 高硬度シートは界面接触抵抗の低減により熱抵抗が下がる
- 車載機器では大型部品の放熱にやわらかいTIMが有効
- 放熱シートの形状や配置の工夫により安全性と放熱性能を両立している
参考文献
- [VOD]事例に学ぶ放熱基板パターン設計 成功への要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]高速&エラーレス!5G×EV時代のプリント基板&回路設計 100の要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]Before After!ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]ポケット・スペアナで手軽に!基板と回路のEMCノイズ対策 10の定石,ZEPエンジニアリング株式会社.













