強制?自然?筐体放熱?密閉筐体の熱計算


密閉筐体での放熱設計の基本

自然空冷の可否判断

図1 小型密閉筐体に15W程度の基板を実装する場合,部品から発生する熱を効率的に筐体へ逃がすことが重要.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[著]国峯 尚樹
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小型密閉筐体に15W程度の基板を実装する場合,部品から発生する熱を効率的に筐体へ逃がすことが重要です.消費電力の大半はFETが占め,6個で合計12Wを発熱します.周囲空気温度が60℃の場合,筐体や基板の熱設計を誤ると部品温度が125℃を超えるため,自然空冷だけでは十分な冷却ができません.

自然空冷の可否判断

事前に自然空冷が可能か判断するためには,発熱量,筐体寸法,部品配置を元にシートを活用します.完全壁付けにより筐体に熱を移動させることで,部品温度を抑えられます.壁付けなしでは基板温度が200℃程度まで上昇するため危険です.

  1. 筐体への熱移動:15W中13W程度を筐体に逃がす
  2. 基板放熱空間:部品周囲四方に29㎜の空間を確保
  3. 壁付け効果:部品温度を125℃以下に抑制可能

熱伝導対策とTIM活用

基板上の部品に厚み2㎜,熱伝導率3W/mKのTIMを設置し,筐体上面に接触させることで,部品温度は122℃程度まで低減できます.放熱パッドやTIMの配置により,片面・両面からの放熱が可能となり,局所的な高温部位を効果的に冷却できます.

  1. 片面TIM設置:基板上の局所温度を120℃程度に低減
  2. 両面TIM設置:上面・下面から放熱し,部品温度117℃程度まで低減
  3. 熱回路網法:部品のレイアウトに基づき温度分布を計算

設計時のポイント

筐体放熱では,部品と筐体の接触面積やTIM配置,基板レイアウトが重要です.Excelなどを用いた事前予測により,自然空冷が可能か,強制冷却が必要かを判断できます.部品単体だけでなく,基板全体の熱移動を考慮することで,許容ケース温度125℃を超えない設計が実現できます.

  1. 部品レイアウト:高発熱部品を壁付けして筐体に熱移動
  2. 放熱パッド/TIM:熱伝導効率を向上させる
  3. 温度計算:熱回路網法で基板/筐体温度を評価
〈著:ZEPマガジン〉

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参考文献

  1. [Book/PDF]デシベルから始めるプリント基板EMC 即答200,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. [VOD] Before After! ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】/【IoT・無線・通信編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD/KIT]ポケット・スペアナで手軽に!基板と回路のEMCノイズ対策 10の定石,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [KIT]ミリ波5G対応アップ:ダウン・コンバータ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD/KIT]GPSクロック・ジッタ・クリーナ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  6. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【差動信号とその周辺回路設計技術】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  7. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【A-D/D-Aコンバータの使い方】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  8. [VOD]事例に学ぶ放熱基板パターン設計 成功への要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
  9. [VOD]Gbps超 高速伝送基板の設計ノウハウ&評価技術,ZEPエンジニアリング株式会社.