100W以下の中出力向け!定番電源「フライバック・コンバータ」の設計
パワー・トランジスタのON/OFF動作と電圧・電流の変化
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フライバック方式を採用したUSB電源回路を設計し,MOSFET内蔵のLT1172を使用して3~28Vの出力を実現するための詳細な仕様と動作原理を解説する 〈著:並木 精司〉 出典:5V入力/3~28V可変/3W:プロトタイピング用ミニ電源モジュールの製作
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フライバック・コンバータの基本設計と動作原理
本記事では,100W以下の中出力向け電源として定番のフライバック・コンバータの設計について解説します.出力電圧は3ー24Vの広い範囲で安定動作を実現するため,フライバック方式を採用しました.制御ICにはMOSFET内蔵のワンチップ電源IC LT1172CN8を使用し,小型で効率的なDC-DC変換を実現しています.
フライバック方式はトランスの1次側にスイッチング素子を配置し,オン時間にインダクタンスに電流を蓄え,オフ時間に逆起電圧によって蓄積したエネルギを2次側に放出する構造です.インダクタンスに流れる電流はスイッチON中に直線的に増加し,飽和しない範囲では入力電圧$V_{in}$と時間$t$,インダクタンス$L$の関係で$\Delta I = \frac{V_{in} \times t}{L}$で表されます.蓄積されたエネルギ$E$は$\frac{1}{2} L (\Delta I)^2$で計算できます.
スイッチOFF時,インダクタは流れていた電流を維持しようと逆起電圧$V_f$を発生させます.この逆起電圧は非常に高くなり,無制御の場合は火花放電を起こしてしまいます.フライバック・コンバータではこの逆起電圧を整流ダイオードとキャパシタを用いた放出回路で制御し,エネルギを平滑化して出力電圧として利用しています.
設計上の電圧・電流制約と巻き線比の決定
制御IC LT1172の内蔵トランジスタの耐圧は65Vです.スイッチにかかる電圧$V_{DS}$は入力電圧$V_{in}$,フライバック電圧$V_f$,およびサージ電圧$V_{surge}$の合計で表されます.設計時には安全マージンを考慮し,耐圧の80%を上限としたうえで,$V_f$の上限を15Vに設定しました.
サージ電圧は漏れインダクタンスによって生じ,約10Vと仮定しています.最大出力電圧28Vを目標に巻き線比$n = \frac{N_S}{N_P}$は0.5と設定しました.この巻き線比によりフライバック電圧は約14.25Vとなり,スイッチング周期10μs中のON時間$T_{on}$は約7.6μs,OFF時間$T_{off}$は約2.4μsと計算されます.
入力電圧最低値4.5Vでの平均入力電流$I_{inave}$は約0.888Aと推定されます.ON時間のデューティ比$D_{on}$は0.76であり,内蔵トランジスタに流れる電流のピーク値$I_{sw}$は約1.17Aと算出されます.この値は制御ICの過電流リミッタの範囲内に収まっています.
動作モードの選択と効率面の考慮
フライバック・コンバータの動作モードには不連続モード(DCM),連続モード(CCM),臨界モード(QRM)があります.制御IC LT1172は固定スイッチング周波数100kHzのため臨界モードは利用できません.不連続モードではピーク電流が大きくなり損失が増加するため,最大出力3Wを目指す本設計には適しません.
連続モードでは1次巻き線の電流が途切れず流れ,トランスのエネルギ利用効率が高く,スイッチング素子の負担も軽減されます.損失を考慮した全体の電力変換効率は約75%と仮定し,設計初期の計算に用いています.必要に応じて効率の補正を繰り返し,より正確な設計値を導き出すことが可能です.
以上の設計指針に基づき,フライバック・コンバータの主要部品選定,巻き線比やスイッチング・タイミングを最適化することで,安定した中出力USB電源の実現を目指しています.
〈ZEPマガジン〉参考文献
- [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 初歩の電子回路設計,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]Before After!ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]事例に学ぶ放熱基板パターン設計 成功への要点,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [動画]初めての電源・アナログ回路設計[DC-DC コンバータの製作],ZEPエンジニアリング株式会社.





























































