WebブラウザでI/O!Androidスマホで作る計測制御デバイス
MIT App Inventor2×Pico W!WiFi温湿度計をノーコード制作
ノーコードで始める計測制御アプリ開発
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図1 MIT App Inventor2とPico Wの組み合わせによって,ノーコードでIoTデバイスの制御アプリをスピーディに開発できる.Wi-Fi通信や定期的なデータ取得といったIoT開発の基本技術が得られる.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[著]後閑 哲也 詳細:[Webinar/Full KIT]WebブラウザでI/O!Androidスマホで計測制御デバイス開発 |
MIT App Inventor2は,Androidスマートフォン向けのアプリケーションを,プログラミング言語を使わずに作成できる開発環境です.完全にWebブラウザ・ベースで動作し,HTML5とJavaScriptで構築されています.デザイナ画面とブロック・エディタを組み合わせてアプリの画面と機能を視覚的に設計できます.
Raspberry Pi Pico WとMIT App Inventor2を用いることで,Wi-Fi経由で温湿度センサのデータを取得し,Androidタブレットに表示する計測制御デバイスを構築できます.センサからのデータは30秒ごとに取得し,数値とグラフの両方で視覚的に表示されます.
MIT App Inventor2の開発手順
アプリ作成の基本手順は以下の通りです.
- 新規プロジェクトを作成
- デザイナでボタン,テキスト,グラフなどのコンポーネントを配置
- ブロック・エディタで各コンポーネントの動作を設定
- アプリをビルドしてQRコードを生成
- AndroidデバイスでQRコードを読み取り,アプリを実行
この手順では,日本語のプロジェクト名は使用できません.デザイン面ではタブレットサイズの画面に合わせてコンポーネントを中央配置し,温度・湿度の表示ラベル,IP入力欄,接続ボタン,グラフ表示部を構成します.データ表示にはチャート・コンポーネントを使い,マゼンタで温度,青で湿度を表現します.
リアルタイム・データ取得とグラフ描画
データ取得はWebコンポーネントを通じて,Pico WからHTTP通信により行います.時計コンポーネントのタイマー間隔を30000ms(30秒)に設定することで,一定間隔でリクエストを発行します.受信したテキスト・データはリスト形式で格納し,必要に応じて温度($Temp$)と湿度($Humi$)を取り出して表示ラベルとチャートに反映させます.
この一連の操作はすべて,ブロック型プログラミングで視覚的に定義されます.MIT App Inventor2では条件分岐や関数などの基本構文もブロックとして提供されており,プログラミング経験がなくてもアプリの制御が可能です.
まとめ
MIT App Inventor2とPico Wの組み合わせにより,ノーコードでIoTデバイスの制御アプリを構築できることが確認できました.Webベースの開発環境とブロック型プログラミングによって,センサ・データの取得・表示・グラフ化までの工程を視覚的に構築できます.Wi-Fi通信や定期的なデータ取得といったIoT開発の基本要素を理解するのに適した題材です.
MIT App Inventor2の開発の背景
MIT App Inventor2は,視覚的なアプリ開発環境として,2008年にGoogleによって開発が始まりました.2010年に一般公開され,その後2011年に開発はMITに移管されました.MITではオープンソース化が進められ,2012年に正式サービスが開始されました.2013年には第2世代であるApp Inventor2が公開され,HTML5ベースの完全Webアプリケーションとして動作するようになりました.
この開発環境はブラウザのみで完結し,特別なソフトウェアのインストールが不要です.2021年にはiOSでのテストにも対応し,2024年には日本語化が実現しました.
MIT App Inventor2の特徴
MIT App Inventor2の最大の特徴は,ビジュアル・ブロック型のプログラミング・インターフェースです.画面デザインと論理制御の両方を,マウス操作だけで構築できます.プログラミング言語を一切記述せずに,変数,条件分岐,繰り返し処理,関数の呼び出しが可能です.Scratchに似た構成であり,教育現場や初心者のIoTアプリ開発に広く活用されています.
また,MIT AI2 Companionというアプリを使えば,スマートフォンやタブレット実機上で即時に動作確認できます.ビルド工程も簡単で,生成されたQRコードをスマホで読み取るだけでアプリがインストールされます.
MIT App Inventor2は,迅速なプロトタイピングが求められる現場や,ノーコードでのIoTアプリ開発に適した選択肢です.特にRaspberry Pi Pico Wのような無線通信可能なマイコンと組み合わせることで,計測制御系のアプリを迅速に構築できます.I$^$2Cなどのセンサ通信結果をWi-Fi経由で取得し,リアルタイムで可視化する仕組みは,技術者の理解を深める助けになります.
MIT App Inventor2は教育用に設計されていますが,実際のセンサ制御やHTTP通信など,産業技術に通じる基本を含んでいます.開発環境自体がオープンソースであるため,拡張性や応用性も高く,今後の技術展開の基盤としても利用できます.〈著:ZEPマガジン〉
著者紹介
- 1971年 東北大学 工学部卒 大手通信機メーカにて制御機器開発に従事
- 1996年 ホームページ「電子工作の実験室」を開設
- 2003年 有限会社マイクロチップ・デザインラボ設立 代表取締役 計測制御システムコンサルタント,書籍執筆 セミナ講師
- 2012年 神奈川工科大学 工学部 客員教授
著書
- "[VOD/KIT/Book/data]ラズパイPico W×ChatGPT APIで学ぶ 会話型IoTエッジ開発,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]PICマイコン オールイン1日学習キット ,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/Pi KIT]ラズベリー・パイで学ぶLinux&Pythonプログラミング超入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/Pi KIT]ラズパイ×Node-REDで作ろう!IoTアプリ開発入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- 電子工作のための PIC16F1ファミリ活用ガイドブック,技術評論社.
参考文献
- [VOD/KIT]STM32マイコン&Wi-Fiモジュールで学ぶ C/C++プログラミング入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]M5Stack Core2付き!ESP32で学ぶPython&Arduinoプログラミング入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]STM32マイコン&Wi-Fiモジュールで学ぶ C/C++プログラミング入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]M5Stackで一緒に作ろう!IoTセンシング・エッジ×クラウド連携システム開発[改訂版],ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]実習キットでできる!ラズパイPicoでマイコン入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]LabVIEW×Arduino!初めてのパソコン計測&制御【改訂版】,ZEPエンジニアリング株式会社.