センチメートルRTK測位入門3 高感度アクティブ・アンテナ


-130~-160dBmの衛星電波を確実に受信するために

高感度なRFアンプ内蔵アンテナの電源投入と設置

図1 GNSS衛星と地上の距離は約2万km.衛星の電波のレベルは地上で-130~-160dBm程度と言われている.cm級のリアルタイムな高精度測位を実現するかぎはアンテナが握っている.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[提供・著]吉田 紹一(Shouichi Yoshida).
詳細[VOD/KIT] RTKポータブル・センチメートル測位キット

アクティブ・アンテナの基礎知識と設置方法

GNSS衛星から地上までの距離は約2万kmです.衛星が発する電波は,地上に到達するまでに非常に弱くなります.その受信レベルは,-130~-160dBm程度と,非常に低い電力レベルです.したがって,センチ・メートル級のRTK測位を実現するためには,アンテナの性能が非常に重要です.

RTK GNSS測位用アクティブ・アンテナは,高精度な信号を受信できるように,高感度RFアンプを内蔵しています.この高感度RFアンプは,弱い信号を増幅し,安定した測位データを提供します.このアンプが高感度であることで,特に都市部や障害物が多い環境でも信号を確保できるようになっています.しかし,アンプの感度が高い分,ノイズにも影響されやすいため,周囲環境にも配慮が必要です.

アクティブ・アンテナはその内部の中心部分を測位の基準とします.アンテナが大きい場合,この測位原点の正確な位置を把握し,正確な設置を行うことがRTK測位の精度に直結します.屋外や移動体に設置する際は,安定した場所に取り付ける必要があります.

電源供給と接続における注意点

アクティブ・アンテナには電源供給が必要です.

電源供給はアンテナの信号線を介して行われ,アンテナの高精度な動作を支えます.信号線は2本しかなく,シールド線がノイズを防ぎながら信号伝送と電源供給を兼ねる構造となっています.この構造により,配線が簡潔である一方,適切な取り扱いが重要です.

アンテナを接続する際には必ず電源を切った状態で行わなければなりません.電源を入れたままアンテナを抜き挿しすると,内部のRFアンプが壊れ,信号感度が劣化する恐れがあります.完全に壊れるとすぐに故障がわかりますが,部分的な劣化の場合は感度が落ちるだけで気付きにくく,測位精度に悪影響を及ぼします.

アンテナ・コネクタも非常に小型のため,接続時には専用の変換パーツが必要です.この変換パーツは製品に付属しているため,必ず使用してください.

測位精度を維持するための運用ポイント

  1. 電源接続:アンテナ接続時には必ず電源を切る.特にバッテリ内蔵のモジュールでは,完全に電源がオフになっていることを確認する
  2. 設置位置の確認:アンテナの中心位置が測位の基準となるため,正確に配置する
  3. 環境ノイズへの対策:アンテナは高精度なアンプを内蔵しているため,ノイズの影響を受けやすい.適切な場所に設置し,周囲のノイズを抑える

アクティブ・アンテナを安全かつ効果的に運用するためには,次の点に注意が必要です.〈著:ZEPマガジン〉

動画を見る,または記事を読む

著者紹介

  • 1983年 大学卒業後,新日本電気入社 パソコンの設計生産にかかわる
  • 1985年 中近東にてパソコン生産にかかわる,その後EU,アジア,北米を転々
  • 1987年 アメリカ駐在 ラップトップPCの設計生産にかかわる
  • 1992年 帰国 光ディスク・ドライブの信頼性評価,フォーマットプロモーション
  • 2019年 11月1日 BtS Tech 株式会社 創業

著書

  1. ラズベリー・パイ vs ASUS Tinker Board,ラズベリーパイ vs ASUS Tinker Board,トラ技2018年7月号,CQ出版社.
  2. 別冊 1㎝ピンポイントGPS RTKスタートアップ・マニュアル,トラ技2019年2月号,CQ出版社.
  3. GPS×カメラ×地図 初歩の自己位置推定,トラ技2019年10月号,CQ出版社.
  4. 74ロジックで超入門 FPGA×RISC-V評価キットの製作,トラ技2019年12月号,CQ出版社.

参考文献

  1. LiDAR×RTK×IMUフュージョン!自動運転&SLAMロボット開発 要点100,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. [VOD/KIT] RTKポータブル・センチメートル測位キット,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD/KIT]SLAMロボット付き!ROSプログラミング超入門,ZEPエンジニアリング株式会社.