位相補償容量の最適値探し:電子回路シミュレーションで実験


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位相遅れと補償容量の関係

図1 補償に用いるキャパシタの容量が小さい場合,進み量が不足して安定性の改善は限定的.容量が大きすぎる場合,過補償となり,応答速度が低下したり新たな波形のひずみが発生したりする.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.詳細は[VOD/Full KIT/data]実験キットとパソコンで学ぶAnalog Devicesアナログ電子回路教室

増幅回路では出力と入力の間で位相遅れが生じます.これは回路の内部インピーダンスや寄生容量によって発生する現象です.位相遅れが大きくなると,回路の安定性が低下し,発振や波形のひずみが生じやすくなります.

この位相遅れを補正するために,出力から反転入力にキャパシタを接続する方法があります.この接続によって位相進みが生じ,遅れを部分的に打ち消すことが可能です.こうした補正手法は進み位相補償と呼ばれます.

補償容量の影響

補償に用いるキャパシタの容量値によって,位相進みの状態は変化します.容量が小さい場合,進み量が不足して安定性の改善は限定的です.容量が大きすぎる場合,過補償となり,応答速度が低下したり新たな波形のひずみが発生したりします.

回路の安定性を確保するには,適切な容量値を選ぶ必要があります.選定の理論は複雑ですが,実験やシミュレーションを通して最適値を見つけることができます.

シミュレーションでの確認手順

電子回路シミュレーションを用いることで,補償容量の最適値を探索できます.手順の一例を以下に示します.

  1. 回路図に補償用キャパシタを挿入する
  2. 容量値を変更しながら出力波形を観測する
  3. 波形の安定性や過渡応答の変化を確認する
  4. もっとも安定で過渡応答が滑らかな容量値を採用する

シミュレーションでは,区形波などの信号を入力して回路応答を確認すると,容量の変さらによる位相補償の効果が視覚的に理解できます.こうして最適値を求めることで,回路設計の安定性を高めることが可能です.

設計上の注意点

容量選定では回路のほかの要素との相互作用も考慮する必要があります.抵抗や寄生インダクタンスの影響を含め,全体の位相余裕を確認しながら容量を調整することが重要です.シミュレーション結果を参考にして,実機での動作確認を行うとより安全です.

このように,位相補償用キャパシタの最適値はシミュレーションによって確認でき,回路の安定化に直接つながります.実験とシミュレーションを組み合わせて最適値を探索することが有効です.

〈著:ZEPマガジン〉

動画を見る,または記事を読む

参考文献

  1. [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 初歩の電子回路設計,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【A-D/D-Aコンバータの使い方】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【差動信号とその周辺回路設計技術】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD]高精度アナログ計測回路&基板設計ノウハウ,ZEPエンジニアリング株式会社.