増幅回路の発振を止める:定石「進み位相補償」


実験キットとパソコンで学ぶアナログ電子回路教室

増幅回路の発振とその原因

図1 増幅回路の出力信号が入力に逆相で戻る際,十分な位相余裕がないと,信号が自己増幅されて周期的に振動する.この好ましくない現象を抑えるために,位相補償が有効.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.詳細は[VOD/Full KIT/data]実験キットとパソコンで学ぶAnalog Devicesアナログ電子回路教室

増幅回路において発振が起こる理由は,回路内の位相遅れや帰還経路の特性にあります.出力信号が入力に逆相で戻る際,十分な位相余裕がないと,信号が自己増幅されて周期的に振動します.この現象を抑えるために,位相補償の手法が重要です.

進み位相補償とは,帰還ループの特定の経路に容量を挿入して,信号の位相を進めることで発振を抑える方法です.入力信号や出力信号が安定化することで,回路全体の過渡応答が改善されます.

進み位相補償の実装方法

実験では,負帰還回路の機間抵抗に並列で容量を接続します.この容量は数百pFから数nFの範囲で設定されます.回路に区形波を入力した場合,発振による出力の暴れが減少することが確認できます.

  1. 機間抵抗の特定部分に並列で容量を接続する
  2. 容量値を調整して出力波形の安定性を確認する
  3. 必要に応じて容量を微調整して発振を最小化する

補償の効果と注意点

進み位相補償を施すと,負帰還による発振抑制が得られ,出力信号の安定性が向上します.容量の接続により帰還経路の位相が進むことで,信号が過剰に増幅されることを防ぎます.過剰な容量挿入は応答速度の低下を招くため,回路特性に応じた調整が重要です.

実験キットやパソコンを用いてシミュレーションや測定を行うと,進み位相補償による発振抑制効果を定量的に確認できます.回路全体の安定化を図ることで,増幅回路の設計精度が向上します.

〈著:ZEPマガジン〉

動画を見る,または記事を読む

参考文献

  1. [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 初歩の電子回路設計,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【A-D/D-Aコンバータの使い方】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【差動信号とその周辺回路設計技術】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD]高精度アナログ計測回路&基板設計ノウハウ,ZEPエンジニアリング株式会社.