増幅回路の出力インピーダンス:負帰還による抑圧効果
実験キットとパソコンで学ぶアナログ電子回路教室
増幅回路の出力インピーダンスとは
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| 図1 増幅回路における出力インピーダンスは,回路の出力端から見た内部のインピーダンス.単体のOPアンプでは数百Ωから数kΩの値をもつ.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.詳細は[VOD/Full KIT/data]実験キットとパソコンで学ぶAnalog Devicesアナログ電子回路教室 |
増幅回路における出力インピーダンスは,回路の出力端から見た内部のインピーダンスです.基本的には抵抗と同じように考えることができ,交流成分においてはキャパシタやインダクタによるリアクタンスも含まれます.この抵抗成分とリアクタンス成分をまとめてインピーダンスと呼び,記号では$Z$で表されます.
出力インピーダンスはOPアンプの出力段に内在する抵抗を示しており,単体のOPアンプでは数百Ωから数kΩ程度の値をもつことがあります.この値は回路に負荷を接続した際の出力電圧に影響します.
負帰還による出力インピーダンスの抑圧
増幅回路に負帰還を導入すると,出力インピーダンスは大幅に低下します.負帰還は回路の出力を入力に戻すことで,出力の変動を抑制する働きをもちます.これにより,OPアンプ単体で高めの出力抵抗をもつ場合でも,回路全体としては低い出力インピーダンスが得られます.
負帰還が導入された回路では,外部負荷が接続されても出力電圧の変化が小さくなり,回路の安定性や線形性が向上します.この効果は抵抗値の選定や帰還比によって調整できます.
出力インピーダンスの測定と設計上の注意点
回路設計では出力インピーダンスを正確に理解することが重要です.設計時には以下のポイントを確認するとよいです.
- 出力抵抗の大きさ:単体OPアンプでは数百Ωから数kΩの範囲であることを考慮する
- 負帰還の比率:負帰還によって出力インピーダンスを低下させる量を決定する
- 周波数特性:キャパシタやインダクタの影響で周波数依存性があることを理解する
- 負荷への影響:外部負荷によって出力電圧が変化しないよう設計する
- 回路安定性:出力インピーダンスを低くしすぎると発振などのリスクがあることを把握する
このように,出力インピーダンスは単体OPアンプの特性だけでなく,回路全体での負帰還設計によって制御されます.正確に把握することで,増幅回路の性能を最大限に引き出すことができます.
〈著:ZEPマガジン〉参考文献
- [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 初歩の電子回路設計,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【A-D/D-Aコンバータの使い方】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【差動信号とその周辺回路設計技術】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]高精度アナログ計測回路&基板設計ノウハウ,ZEPエンジニアリング株式会社.