発振トラブル多し:I-V変換アンプの設計要点


実験キットとパソコンで学ぶアナログ電子回路教室

回路モデルの簡略化と影響

図1 フォトダイオードに光が当たると電流が出力される.この微小電流を電圧に変換するI-V変換アンプは,発振が起きやすい点に注意が必要.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.詳細は[VOD/Full KIT/data]実験キットとパソコンで学ぶAnalog Devicesアナログ電子回路教室

I-V変換アンプは光電流などの微小電流を電圧に変換する回路です.光がフォトダイオードに当たると電流が流れます.この電流を増幅する際に発振が起きやすい点に注意が必要です.

回路を等価モデルで表すと,電流源と接合容量,並列の高抵抗(GΩ以上)で構成されます.この接合容量や抵抗が回路の周波数応答に影響し,設計によっては発振の原因になります.

回路モデルの簡略化と影響

本来の回路を簡略化すると,次の構成で表現できます.

  1. 電流源:フォトダイオードから供給される光電流
  2. 接合容量:フォトダイオードの接合部がもつ数十pFから100pF程度の容量
  3. 高抵抗:GΩ以上で並列に接続される抵抗

この構成により,接合容量と高抵抗が回路の位相に影響を与えます.特に高周波成分が存在すると,I-V変換アンプの出力に不安定なふるまいが現れることがあります.

発振防止の設計要点

発振を防ぐためには次の点に留意することが重要です.

  1. 接合容量の影響を考慮したフィードバック設計:容量による位相遅れを補償する
  2. 抵抗値の選定:高抵抗と容量の組み合わせによる低周波特性を確認する
  3. 回路の簡略化モデルでシミュレーション:接合容量や電流源の影響を検証する

シミュレーションを通して容量値を変化させ,応答の安定性を確認することが有効です.回路の応答が望ましい範囲に収まる容量値を選ぶことで,発振を抑制できます.

実験キットを用いた検証

実験キットとパソコンを用いて,I-V変換アンプの動作確認が可能です.光電流を入力として接続し,波形観測を行うことで発振や応答の変化を確認できます.容量や抵抗の選定が出力に与える影響を直接観察できるため,設計理解が深まります.

以上の考え方を適用することで,発振トラブルを回避しつつ,安定したI-V変換アンプの設計が可能です.接合容量の理解とフィードバック設計が重要なポイントです.

〈著:ZEPマガジン〉

動画を見る,または記事を読む

参考文献

  1. [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 初歩の電子回路設計,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【A-D/D-Aコンバータの使い方】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD]アナログ・デバイセズの電子回路教室【差動信号とその周辺回路設計技術】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD]高精度アナログ計測回路&基板設計ノウハウ,ZEPエンジニアリング株式会社.