HDL 500行!ミニCPUの製作
DE10 FPGAキットで作るRISC-V CPU
RISC-VとミニCPU設計の全体像
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図1 RISC-Vはオープンソースの命令セット・アーキテクチャで,誰でも自由に使用・改良が可能.今回,このRISC-V命令セットに基づく,C言語でソフトウェア開発が行える環境を整備したミニCPUを開発.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[著]圓山 宗智 詳細:[Webinar/KIT/data]新人技術者のためのRISC-V CPU設計 初めの一歩~C言語完全対応!HDLソース 500行のミニCPUを一緒に作る~ |
RISC-Vはオープンソースの命令セット・アーキテクチャで,誰でも自由に使用・改良が可能です.今回,このRISC-V命令セットに基づく,C言語でソフトウェア開発が行える環境を整備したミニCPUを開発しました.
設計はHDL(ハードウェア記述言語)で行われ,最終的にFPGAに実装されます.HDLコードは約500行で,シンプルながらパイプライン構造を備えており,命令実行の流れを体験的に学べるよう構成されています.
論理設計とシステム構成の基本
CPU設計に先立ち,論理回路設計の基礎を押さえる必要があります.クロック同期のしくみ,メモリとの接続,バスの制御などが重要です.今回は2ステージから3ステージ構成のパイプラインを採用し,性能と実装の容易さを両立しています.
メモリとバスの設計はCPUの性能や安定性に直結します.ROMやRAMとの接続方法,バス上での信号の衝突防止,制御信号の扱いが含まれます.また,周辺機能としてUART通信やタイマも実装され,より実用的なCPUシステムの構築を支援します.
C言語開発環境とシミュレーション
ソフトウェア開発にはエクリプス(MZCDT)とRISC-V標準コンパイラーが使用されます.開発ツールは事前に提供され,C言語でのプログラム記述からビルド,FPGA上での実行までを一貫して体験できます.
設計後には論理シミュレーションを行い,設計の妥当性を確認します.その後,実機FPGAにデプロイしてCプログラムを
命令処理を高速化する技術:パイプライン
パイプラインとは,CPUにおける命令処理を分割し,各段階を並列に実行する構造です.処理を直列に実行する従来型に比べて,複数命令を同時に処理できるため,スループットの向上が期待されます.
今回設計するミニCPUでは,2ステージから3ステージの簡易的なパイプラインを採用します.これは,設計と理解のバランスを重視しつつ,実用的な命令実行を体験できるようにするためです.
パイプラインの構成と動作
一般的なパイプラインは以下のような段階で構成されます.
- 命令フェッチ:命令をメモリから取得
- 命令デコード:命令を解析し,必要な制御信号を生成
- 実行:演算やメモリ・アクセスなどの処理を実行
今回の2?3ステージ構成では,これらの段階を適切に統合し,動作を簡略化しています.ステージ数が少ないため,設計が単純で理解しやすく,動作確認も容易です.
パイプライン設計の注意点
パイプラインには命令間の依存やリソースの競合といった課題が存在します.たとえば,命令Aが書き込むレジスタを命令Bが読み込もうとすると,データハザードが発生します.このような場合にはフォワーディングやスロット挿入などの対策が必要です.
今回のミニCPUでは,極力シンプルな制御とすることで設計の複雑さを抑えています.その結果,パイプラインの基本構造と動作の理解に集中できます.
まとめ
パイプラインはCPUの命令処理を高速化するための基本的な技術です.段階的に処理を並列化することで性能を高めつつも,設計においてはハザードや同期制御といった配慮が必要です.今回設計したミニCPUでその基本を学べます. 〈著:ZEPマガジン〉
著者紹介
- 出身地:京都市左京区
- 仕事:1986年,日立製作所に入社し,SHマイコンの開発に従事.以降,ルネサステクノロジ,ベンチャー企業,大手半導体メーカにて,画像処理用SoCや各種マイコンおよび関連半導体デバイスの開発を統括.現在もマイコン製品設計に取り組んでいる.
- 趣味:1978年からマイコン・FPGA・GPUと戯れ
- 執筆活動:2000年からマイコンを絡めた雑誌記事と書籍を執筆
著書
- [VOD/KIT]実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- ARMベース・システムLSI開発の事例研究,Design Wave Magazine 2006年5月号,CQ出版社.
- ARM汎用プロセッサで使える汎用JTAGデバッガを自作する,Design Wave Magazine 2008年6月号,CQ出版社.
- 並列処理プロセッサxCORE徹底研究,インターフェース 2014年11月号~2015年6月号(連載),CQ出版社.
- Cで直叩き!超並列コンピュータGPU全速力,トランジスタ技術 2019年9月号(特集),CQ出版社.ほか
- 今すぐ使えるH8マイコン基板 初版2010年,増補版2011年,CQ出版社.
- 2枚入り小型ARMマイコン基板 2011年,CQ出版社.
- ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン 基板付き 2013年,CQ出版社.
- ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン 開発編 2013年,CQ出版社.
- SHマイコン活用記事全集 2014年,CQ出版社.
- FPGA電子工作スーパキット 2016年,CQ出版社.
- MAX10実験キットで学ぶFPGA&コンピュータ 2016年,CQ出版社.
- 完全版FPGA電子工作オールインワン・キット 2016年,CQ出版社.
参考文献
- Lチカ入門!ソフトウェア屋のためのHDL事はじめ,ZEPエンジニアリング株式会社.
- Zynqで作るカスタム・コンピュータ・チップ,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]一緒に動かそう!Lチカから始めるFPGA開発【基礎編&実践編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]Xilinx製FPGAで始めるHDL回路設計入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]Zynqで初めてのFPGA×Linux I/O搭載カスタムSoC製作,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]カメラ×ラズパイで一緒に!初めての画像処理プログラミング
- [VOD/KIT] 実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD/KIT]ARM Cortex-A9&FPGA内蔵SoC Zynqで初体験!オリジナル・プロセッサ開発入門,ZEPエンジニアリング株式会社.