Efinix社のRISC-V IPコア Sapphire SoCの概要


1万円 FPGAスタータキットで作る RISC-V CPU


[Webinar/KIT/data]新人技術者のためのRISC-V CPU設計 初めの一歩(5月31日~6月7日,2日コース)


Sapphire SoCの構成と柔軟性

図1 Sapphire SoCは,RISC-Vアーキテクチャをベースとした32ビットCPUコアと多様な周辺機能を組み合わせたIPコア.VexRiscvをコアに据え,パイプライン処理や割込み対応,例外処理などを網羅.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.参考:[VOD/KIT] 実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門

Efinix社が提供するSapphire SoCは,RISC-Vアーキテクチャをベースとした32ビットCPUコアと多様な周辺機能を組み合わせたIPコアです.このSoCはVexRiscvをコアに据え,パイプライン処理や割込み対応,例外処理など基本的な機能を網羅しています.特に,ユーザ側で構成を自由に設定できる点が特徴です.内部メモリは最大512KB,外部メモリコントローラとしてDDR3やLPDDR4x,HyperRAMに対応しており,幅広い用途に対応できます.

周辺機能も充実しており,UARTやSPI,GPIO,I$^$2Cなど最大3個のポートを搭載可能です.ユーザ・ロジックとの接続にはAXIインターフェースを用い,最大512ビット幅に対応しています.この構成により,高速なデータ処理と外部接続を両立できる環境が整っています.

開発フローと1万円FPGAスタータキットの実現性

Sapphire SoCは,Efinix社の統合開発環境Efinityと連携して開発を進めます.IP EditorでSoC構成を定義し,Interface Designerで外部ポートやPLLなどを設計した後,論理合成や配置配線,ビット・ストリームの生成を行います.最後にProgrammerでFPGAボードに書き込みます.

ソフトウェア開発はEfinity Embedded Software IDEを使い,命令メモリ(SRAM)への書き込みやデバッグも行えます.このような構成により,市販の安価なTrion FPGA評価ボードを用いても,本格的なRISC-V SoCを動作させることができます.1万円前後のスタータキットを使って,独自のRISC-Vマイコン環境を構築することが可能です.

AXIインターフェースの基本構成

Sapphire SoCは,外部メモリやユーザ・ロジックとのデータ転送にARM社のAXI(Advanced eXtensible Interface)を使用しています.AXIは高性能なバス仕様で,複数のマスタとスレーブ間での同時アクセスを効率的に処理できます.

Sapphire SoCでは,以下の構成が可能です.

  1. 外部メモリ用のAXI3(半二重)またはAXI4(全二重)バス
  2. ユーザ・ロジック用のAXIマスタ・チャネル(最大2系統)
  3. ユーザ・ロジック用のAXIスレーブ・チャネル(1系統)
この構成により,柔軟なデータ・フロー設計と高速化が可能になります.

ユーザ設計との統合性

Sapphire SoCのAXIマスタ・チャネルは,データ幅を32~512ビットで設定可能です.これにより,画像処理や高速信号処理など,大量のデータ転送が必要なアプリケーションにも対応できます.一方でスレーブ・チャネルを用いることで,ユーザ設計側からSoC内のリソースへアクセスする機構も実現できます.

このようにAXIインターフェースは,Sapphire SoCとユーザ・ロジックの橋渡し役として極めて重要な役割を果たしています.

Sapphire SoCのAXIインターフェースは,外部メモリとの高速通信とユーザ設計との柔軟な接続を実現する鍵です.最大512ビット幅のバス設計により,高スループットを必要とする応用にも適応できる構成です.

〈著:ZEPマガジン〉

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著者紹介

  • 出身地:京都市左京区
  • 仕事:1986年,日立製作所に入社し,SHマイコンの開発に従事.以降,ルネサステクノロジ,ベンチャー企業,大手半導体メーカにて,画像処理用SoCや各種マイコンおよび関連半導体デバイスの開発を統括.現在もマイコン製品設計に取り組んでいる.
  • 趣味:1978年からマイコン・FPGA・GPUと戯れ
  • 執筆活動:2000年からマイコンを絡めた雑誌記事と書籍を執筆

著書

  1. [VOD/KIT]実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. ARMベース・システムLSI開発の事例研究,Design Wave Magazine 2006年5月号,CQ出版社.
  3. ARM汎用プロセッサで使える汎用JTAGデバッガを自作する,Design Wave Magazine 2008年6月号,CQ出版社.
  4. 並列処理プロセッサxCORE徹底研究,インターフェース 2014年11月号~2015年6月号(連載),CQ出版社.
  5. Cで直叩き!超並列コンピュータGPU全速力,トランジスタ技術 2019年9月号(特集),CQ出版社.ほか
  6. 今すぐ使えるH8マイコン基板 初版2010年,増補版2011年,CQ出版社.
  7. 2枚入り小型ARMマイコン基板 2011年,CQ出版社.
  8. ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン 基板付き 2013年,CQ出版社.
  9. ARM PSoCで作るMyスペシャル・マイコン 開発編  2013年,CQ出版社.
  10. SHマイコン活用記事全集 2014年,CQ出版社.
  11. FPGA電子工作スーパキット 2016年,CQ出版社.
  12. MAX10実験キットで学ぶFPGA&コンピュータ 2016年,CQ出版社.
  13. 完全版FPGA電子工作オールインワン・キット 2016年,CQ出版社.

参考文献

  1. Lチカ入門!ソフトウェア屋のためのHDL事はじめ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. Zynqで作るカスタム・コンピュータ・チップ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD/KIT]一緒に動かそう!Lチカから始めるFPGA開発【基礎編&実践編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD/KIT]Xilinx製FPGAで始めるHDL回路設計入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD/KIT]Zynqで初めてのFPGA×Linux I/O搭載カスタムSoC製作,ZEPエンジニアリング株式会社.
  6. [VOD]カメラ×ラズパイで一緒に!初めての画像処理プログラミング
  7. [VOD/KIT] 実習キットで一緒に作る!オープンソースCPU RISC-V入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  8. [VOD/KIT]ARM Cortex-A9&FPGA内蔵SoC Zynqで初体験!オリジナル・プロセッサ開発入門,ZEPエンジニアリング株式会社.