リフロ?手はんだ?フットプリントの作成術


こて先を当てる面を確保せよ

目安は部品端から0.5mm以上

図1 フットプリントの作成は,プリント基板の信頼性を決める重要な作業.部品の実装方法には,リフロ(自動はんだ付け)と手はんだの選択肢があり,それぞれに適したフットプリントを設計することが重要.動画では,リフロと手はんだにおけるフットプリント設計の違いや,プロフェッショナル向けのフットプリント作成時のポイントを解説.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.詳細は[VOD]動画で一緒にプリント基板開発 KiCad超入門【KiCad 6対応 完全マニュアル】

KiCad超入門とフットプリント設計

KiCadは,オープンソースの電子回路設計ソフトウェアで,PCB(プリント基板)の設計に幅広く使われています.基板設計には,リフロ(自動はんだ付け)と手はんだの選択肢がありますが,それぞれに適したフットプリントの設計が重要です.本記事では,リフロと手はんだにおけるフットプリント設計の違いや,プロフェッショナル向けのフットプリント作成時のポイントを解説します.

フットプリント設計の基本

多くのデバイスには,推奨されるフットプリント寸法がカタログやデータシートに記載されています.通常は,このカタログ値を基に設計を開始しますが,特に手はんだの場合はこれだけでは不十分です.手はんだでは,はんだごてを使用してパッドと部品端子を同時に加熱する必要があります.この際,パッドの露出部分が0.5mm以上あると作業がしやすく,はんだ付けの品質も向上します.

例えば,フットプリントのパッドを 0.6mm とする場合,部品端から 0.5mm の露出部を確保することで,はんだこてが入りやすく,均一なフィレットが形成されます.このように,手はんだの場合は,リフロ用の標準的な設計よりもパッドを少し大きめにするのが一般的です.

リフロと手はんだの違い

リフロにおいては,基板全体を加熱して一度にすべての部品をはんだ付けします.このプロセスは非常に効率的ですが,フットプリントの寸法が不適切だと「マンハッタン現象」などの問題が発生します.この現象は,パッドが大きすぎて部品が立ち上がってしまうことを指します.したがって,リフロではカタログ値や実装業者の推奨に従うのが最適です.

一方,手はんだの場合は,パッドを大きめに設計するのが一般的です.パッドと部品端子の両方を同時に加熱する必要があるため,パッドのサイズを 0.5mm 以上確保することが推奨されます.

プロフェッショナルなフットプリント作成のポイント

プロがフットプリントを設計する際には,特にリード部品に関して次の基準を守ることが推奨されます.

\[ \text{穴径} = \text{ピン径} + 0.2mm \]

また,ピン・ヘッダやコネクタの場合,穴径を 1.0mm 以上とし,ランド径は穴径の2倍にするのが一般的です.フットプリントのパッド間に配線を通す必要がある場合は,「たわら型」のパッドを利用し,パッド間の距離を確保することで,配線の通しやすさを改善できます.

フットプリントとその重要性

フットプリントとは,電子部品がプリント基板(PCB)に取り付けられるための物理的な接点の配置を指します.適切なフットプリント設計は,基板上の部品の正確な配置やはんだ付けの品質を保証するために非常に重要です.フットプリントが適切でないと,組立て時に問題が発生し,製品の信頼性や性能に悪影響を与える可能性があります.

フットプリントの構成要素

フットプリントは主に次の要素で構成されています.

  1. パッド
  2. 電子部品のリードや端子が接触するための金属部分.はんだ付けに使用される
  3. ランド
  4. スルーホール部品用の穴の周りに配置されたパッドで,リード部品が基板を貫通する際に使用される.
  5. シルク・スクリーン
  6. 部品の外形や名前を示す基板上の印刷で,部品の配置や組み立て時のガイドとなる

これらの要素は,PCB製造時の自動化や手作業におけるはんだ付けの効率を大きく左右します.特に狭ピッチの部品やQFP(Quad Flat Package)など,はんだ付けが困難な部品の場合,フットプリント設計が不適切だと,部品のショートや不具合が発生するリスクが高まります.

フットプリント設計の注意点

フットプリント設計の際には,次の点に注意する必要があります.

  1. パッドのサイズと露出
  2. 特に手はんだでは,パッドの露出部分を十分に確保しないと,はんだ付けが困難になります.目安として,部品端から 0.5mm 以上の露出が必要です.
  3. レジスト
  4. QFPなどの狭ピッチICでは,ピン間にレジストが入るように設計しなければなりません.レジストがないと,はんだ付け時にショートするリスクが高くなります.
〈著:ZEPマガジン〉

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著者紹介

  • FA機器/ハード・ディスク製造装置設計業務に従事後,ベンチャー企業にて半導体検査/医科学用電子顕微鏡,半導体製造装置,理化学機器を開発.2020年 静岡県創業者育成施設審査を通過し,個人事業として独立.ZEPエンジニアリングのキット付きセミナや月刊 トランジスタ技術などで活躍中

著書

  1. [VOD/KIT/data]実験キットで学ぶ 電源・アナログ回路入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. 逆引き101!KiCad&プリント基板設計テクニック集,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. 最新KiCad 6で一緒に始めよう!プリント基板開発 超入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. 「MATLAB/Simulink×ラズパイで学ぶロボット制御入門」講義ビデオ付きパーツセット,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. 一人で始めるプリント基板作り,トランジスタ技術Special No.127,CQ出版社.
  6. 商用利用OK!噂の完全フリー基板作成ツール KiCad,トランジスタ技術2015年3月号,CQ出版社.
  7. 1枚100円も!世界のプリント基板ネット通販メーカ,トランジスタ技術2016年7月号,CQ出版社.
  8. 部品の足にジャストフィット!フットプリント作成,トランジスタ技術2017年5月号,CQ出版社.
  9. コネクタなどの特殊部品のフットプリントを高速自作!CQ FootprintTracer,トランジスタ技術2017年10月号,CQ出版社.
  10. 成功間違いなし!BGA配線 10の基本ルール,トランジスタ技術2020年5月号,CQ出版社.

参考文献

  1. [VOD]高精度アナログ計測回路&基板設計ノウハウ,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. [VOD] Before After! ハイパフォーマンス基板&回路設計 100の基本【パワエレ・電源・アナログ編】/【IoT・無線・通信編】,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [[VOD/KIT] すぐ動く!BM83 Bluetoothスタータキット,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD/Pi KIT] MATLAB/Simulink×ラズパイで学ぶロボット制御入門,ZEPエンジニアリング株式会社.