バーチャル×フィジカルで高速開発!Renesas Arduino誕生


DigiKeyチャネル「10分で動かす!新世代マイコン・キット・チャレンジ」

Fast Prototyping Board,Arduino,Pmod/Groveまで!充実のプロトタイピング環境

図1 2025年12月5日DigiKeyチャネルにて「10分で動かす!新世代マイコン・キット・チャレンジ」という新しい動画連載全5回スタート画像クリックで動画を見る.または記事を読むDigiKeyチャネル

「10分で動かす!新世代マイコン・キット・チャレンジ」第1回で解説された,FPBを用いたバーチャル環境とフィジカル環境の統合的な開発手法について整理します.対象となるマイコンはルネサスエレクトロニクスのRL78ファミリで,特にRL78/G22を搭載したFPBを中心に構成や開発フローが説明されています.

本回の技術的な主題は,実機を用いない初期検証と,実機による評価を分断せずに接続する開発プロセスです.開発段階ごとに適切な環境を選択し,同一のプロジェクトを継続利用できる点に特徴があります.

FPBの構成とRL78ファミリの位置づけ

FPBはルネサス製マイコンを搭載したプロトタイピング向けボードです.USB接続による電源供給と書き込み機能を備え,外部回路を用意せずに動作確認が可能です.Arduino互換端子,Pmod端子,Grove端子を備えており,周辺モジュールとの接続性を重視した構成です.

搭載されるRL78/G22は低消費電力を特徴とするRL78ファミリの中でも, 汎用用途向けに機能を拡張したデバイスです. タイマ,PWM,UART,I$^2$C,ADCなどの基本周辺機能を内蔵し,タッチ・センサ機能もハードウェア・レベルで統合されています.これによりユーザ・インターフェースを含めた評価が単体で完結します.

バーチャル環境とフィジカル環境の役割分担

FPBの開発環境は大きくバーチャル環境とフィジカル環境にわかれます.バーチャル環境ではMCU Simulatorを用い,実機を使用せずにプログラムの挙動や処理時間を確認します.この段階では開発場所や機材に制約が生じにくく,導入初期の検証に適しています.

一定の検証が完了した後,同一プロジェクトをフィジカル環境へ移行します.CS+やe2 studioを用いることで,実機上での動作確認やデバッグが可能です.バーチャル環境で作成したプロジェクトをそのまま読み込める点が大きな特徴です.

開発環境の選択指針

FPBでは複数の統合開発環境を選択できます.用途や習熟度に応じた選択が想定されています.

  1. Arduino IDE:操作が単純で導入しやすい環境
  2. CS+:RL78向け機能を活用しやすい統合環境
  3. e2 studio:多デバイス対応の本格的な開発環境

これらの環境は段階的に移行可能です.初期段階では操作性を重視し,必要に応じて高機能な環境へ移る構成です.

バーチャルとフィジカルをつなぐ開発フロー

本動画では,MCU Simulator上でLEDの輝度変化を確認し,そのプロジェクトを実機FPBへ移行する流れが示されています.バーチャル環境での検証内容をそのまま実機に反映できるため,作業の重複を避けやすい構成です.

この開発フローは, 初期評価から実装確認までを連続した工程として扱います.設計意図と実機挙動の乖離を抑え,開発中の試行錯誤を整理しやすくする点が技術的な利点です. 〈著:ZEPマガジン〉

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チャプタ・リスト

  • 0:40シリーズ全体の構成
  • 1:13第1回の目次
  • 2:12 FPB(Fast Prototyping Board)とは
  • 3:31 RL78/G22 FPBの外観と特徴
  • 4:58 RL78/G22 FPBのブロック図
  • 6:20 RL78ファミリの位置づけ
  • 7:08 RL78ファミリのポートフォリオ
  • 7:45 FPBの開発フロー
  • 8:46フィジカル開発環境の比較
  • 10:03 MCU Simulatorの導入
  • 12:20 MCU Simulatorを使ってみる
  • 14:05 CS+の導入
  • 17:27 Arduino IDEでFPBを動かす
  • 20:26まとめ
  • 21:47次回予告
  • 22:13 DigiKeyお知らせイチケン特別版:センサページ

著者紹介

  • engeer/エンジャー
    エレクトロニクス関連の知識をわかりやすく解説する技術者.EMC・ノイズ対策を中心に,電気・電子回路,電子部品,計測器など幅広い分野を取り扱う.YouTubeチャネル「エンジャー/Engeer」は登録者3万人超.ブログ「EMC村の民」は月間10万PV達成済み.トランジスタ技術,CQハムラジオにも記事を寄稿している.
  • ・YouTube:https://www.youtube.com/c/emc-engeer
  • ・ブログ:https://engineer-climb.com/
  • ・X:https://x.com/emcEngineer

著書

  1. 図解入門よくわかる最新電子部品の基本としくみ,秀和システム.
  2. QucsStudio入門,Kindle出版.
  3. QucsStudio実践入門,Kindle出版.
  4. 電子部品超入門,Kindle出版.
  5. EMC超入門,Kindle出版.
  6. 高周波回路超入門,Kindle出版.

参考文献

  1. [VOD/KIT/data]8bit PIC/Wi-Fi/Debugger搭載!ミニマムIoTデバイス製作キット,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. [VOD/KIT/Book]PICマイコンオールイン1日学習キット,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD/KIT] STM32マイコン&Wi-Fiモジュールで学ぶC/C++プログラミング入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. [VOD/KIT] STM32マイコン&Wi-Fiモジュールで学ぶC/C++プログラミング入門,ZEPエンジニアリング株式会社.