ビーム・フォーミングの原理:フェーズドアレイ・アンテナ入門
遅延ではなく位相で指向性制御
ビーム・フォーミングとは
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図1 フェーズドアレイ・アンテナでは,複数のANTから出力される電波を制御して指向性を作り出す.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.[著]山田浩之 詳細:[VOD]広帯域ソフトウェア無線&フェーズドアレイANT開発要点100 |
フェーズドアレイ・アンテナでは,複数のANTから出力される電波を制御して指向性を作り出します.各ANTからの信号が同位相になる方向が最大のビームになります.これにより,特定の方向に電波を集中させることが可能です.
従来は電波の進む時間を遅延させることでビームの方向を制御していました.複数のANT間でΔTの遅延を追加すると,その遅延に対応した波長の分だけANTパターンの向きが変わります.RXでも同様の原理で受信方向を制御できます.
位相差による指向性制御
実装上,時間遅延を可変するよりも位相Δphを調整する方が容易です.位相差Δphにより,θ方向に出力される電波が同位相となり,メイン・ローブが形成されます.ビーム条件は次の式で表されます.
d sinθ = λ・Δph /2\pi
ここで,λは波長,dはANT間距離です.この関係を用いると,ビーム角θに対して必要な位相差Δphを計算でき,任意の方向にビームを振ることが可能です.
ビーム制御の手順
- 指向させたいθ方向を決定する
- ANT間距離dと波長λを基に位相差Δphを計算する
- 各ANTに計算した位相差Δphを適用する
- 出力電波が同位相となり,指定方向にビームが形成される
IC化されたビーム・フォーミング制御
フェーズドアレイ・アンテナのビーム制御要素はIC化されることが多く,位相差Δphの調整をディジタルで行います.N>2でも同様の原理で複数ANTの出力を同期させることができ,広帯域のCW信号にも適用可能です.
このように,遅延ではなく位相で制御することで,ビーム・フォーミングを効率的かつ精密に行うことができます.ANT間の距離や波長の変化に応じて位相差を調整することで,柔軟なビーム操作が可能です.
〈著:ZEPマガジン〉参考文献
- [VOD/KIT]STM32マイコン&Wi-Fiモジュールで学ぶ C/C++プログラミング入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
- 実験しながら学ぶフーリエ解析とディジタル信号処理[Vol.1:フーリエ解析の基本「三角関数」の正しい理解]
- [VOD]Pythonで学ぶ やりなおし数学塾2【フーリエ解析】