量子技術が変える次世代サイバ・セキュリティ


量子論の基礎から量子鍵配送プロトコルBB84まで

量子鍵配送プロトコルBB84の概要

図1 量子状態で情報を表現する量子ビットは,重ね合わせやもつれの特性をもつ.この性質を活用することで,従来の暗号アルゴリズムでは困難だった安全性の確保が可能
[VOD]GPU/CPU/量子コンピュータによるサイバ・セキュリティ実践プログラミング【セッション3】量子技術が変革するサイバ・セキュリティ

量子技術は従来の計算や通信の枠組みを拡張し,次世代のサイバ・セキュリティに重要な役割を果たします.量子ビット,すなわち量子状態で情報を表現する単位は,重ね合わせやもつれの特性をもちます.この性質を活用することで,従来の暗号アルゴリズムでは困難だった安全性の確保が可能です.量子鍵配送(Quantum Key Distribution:QKD)は量子状態を用いて安全な鍵を共有する技術で,盗聴が発生すると量子状態が崩れるため通信の安全性を保証できます.

量子鍵配送プロトコルBB84の概要

BB84はもっとも基本的な量子鍵配送プロトコルの1つです. 通信者アリスがランダムに選択した量子状態を送信し,受信者ボブが測定します. 状態の選択と測定には基底が関与し,送信と受信で基底が一致した場合だけ鍵のビットとして使用されます. 基底の不一致や盗聴による状態の変化は,事後に統計的な比較によって検出可能です. これにより安全な鍵生成が実現し,従来の公開鍵暗号の脆弱性を回避できます.

量子セキュリティ実装の技術的留意点

実際の量子鍵配送システムは物理環境に依存します.光ファイバやフリースペース光通信を利用する場合,光損失や干渉が鍵の正確性に影響します.検出器や光源の特性,温度制御や振動制御も正確な測定には不可欠です.安全性を高めるには以下の要素が重要です.

  1. 基底選択のランダム化:予測可能性を排除することで盗聴耐性を向上
  2. エラー訂正とプライバシ増幅:誤差を修正し,秘密情報の漏洩を抑制
  3. 物理環境の安定化:光損失や干渉の影響を最小化

量子技術が切り拓く次世代セキュリティ

量子コンピュータによる従来暗号の破壊リスクに対応する技術として,量子鍵配送は有力な手段です.安全性の保証は量子力学の原理に基づき,理論的に絶対的な盗聴検出能力をもちます.今後の実用化に向けては,システムの耐障害性や通信距離の拡張,既存インフラとの統合が課題です.研究開発を通じて量子鍵配送プロトコルBB84や応用プロトコルの最適化が進められ,サイバ・セキュリティの新たな基盤を提供します.

〈著:ZEPマガジン〉

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参考文献

  1. [VOD/KIT] RTKポータブル・センチメートル測位キット,ZEPエンジニアリング株式会社.
  2. LiDAR×RTK×IMUフュージョン!自動運転&SLAMロボット開発 要点100,ZEPエンジニアリング株式会社.
  3. [VOD/KIT]SLAMロボット付き!ROSプログラミング超入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  4. "[VOD/Pi KIT]MATLAB/Simulink×ラズパイで学ぶロボット制御入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  5. [VOD/Pi KIT]ラズパイ×Pythonで動かして学ぶモータ制御入門,ZEPエンジニアリング株式会社.
  6. [VOD/KIT]ラズベリー・パイで学ぶエッジAIプログラミング入門,ZEPエンジニアリング株式会社.