初めての3Dプリンタ 種類と選び方
溶融積層/粉末焼結から光造形/インクジェットまで
- 著者・講師:原井 達紀
- 主催:ZEPエンジニアリング株式会社
- 企画・編集:ZEPエンジニアリング株式会社
ホビーからプロ用まで!3Dプリンタ 初めの一歩
図1 精度100$\mu$mの溶融積層方式から,精度25$\mu$mの光造形方式まで,選択する3Dプリントの造形方式によって仕上がりが大きく異なる.画像クリックで動画を見る.または記事を読む.詳細は[VOD]定番3D CAD「Fusion360」&プリンタ 10の活用ノウハウ |
3Dプリンタの造形メカニズムと精度
造形方式のいろいろ
3Dプリンタの造形方式には,主に溶融積層方式(FDM),光造形方式,粉末焼結,インクジェットなどが存在します.特に溶融積層方式は,最近,主要な特許が切れたことで機種が増え,個人向けにも広く普及しています.この方式ではフィラメントと呼ばれる素材をノズルに送り込み,加熱・溶融させた後,冷却して造形します.造形物は100$\mu$m程度の積層ピッチで仕上がり,精度は比較的粗いですが,運用のしやすさが大きな特徴です.
一方,光造形方式では,液状の光硬化性樹脂を用い,局所的に光を当てて固化させて造形します.この方式は25$\mu$mという非常に細かい積層ピッチが可能で,精度が高く,選択できる材料の幅も広いですが,運用に手間がかかります.各方式の違いにより,3Dプリンタの精度や運用性は大きく異なります.
低価格と高価格3Dプリンタの違い
低価格の3Dプリンタ(FDM方式)では,ノズル温度とテーブル温度の調整が重要な要素で,熱的なチューニングが造形の安定性に影響を与えます.一方,高価格のプリンタには,チャンバの余熱や断熱機能が組み込まれており,外部環境の影響を受けにくく,常に安定した造形が可能です.これにより,業務用とホビー用の使い分けが進んでいます.
精度と積層造形の特性
3Dプリンタによる積層造形は,モデルを高さ方向に「輪切り」にして積み重ねる方式です.このとき,ノズルとテーブルの相対位置はメカニカルな案内面やモータの精度によって決まります.例えば,光造形方式では,光学部品の精度が造形精度に大きく影響します.高精度な部品を使用することで,プリンタの価格は上がりますが,より高い造形精度が得られます.
3Dプリンタの技術進化と未来
新しい造形方式の開発
3Dプリンタの技術は日々進化しており,新しい造形方式が次々と登場しています.これまで主流だった溶融積層方式(FDM)や光造形方式に加え,粉末焼結方式やインクジェット方式も広がりを見せています.
ホビーから業務用への広がり
3Dプリンタは当初,ホビー用途での利用が中心でしたが,現在では業務用にも広く使われるようになっています.特に自動車業界や航空宇宙産業など,メートル級の大型造形が必要な分野でも,3Dプリンタの利用が進んでいます.高価格帯の3Dプリンタでは,チャンバ内の温度制御が徹底されており,外部環境に左右されない安定した造形が可能です.これにより,精度の高い造形が求められる業務にも対応できるようになりました.
精度向上のための技術的工夫
3Dプリンタの精度向上には,ノズルの制御やテーブルの位置決め精度が重要な役割を果たします.高精度な造形を実現するためには,メカニカルな構造の精度向上が必要です.例えば,光造形方式では,使用する光学機器の精度が造形結果に大きく影響します.高性能な光学機器を採用することで,精度の向上が図られ,より細部まで再現できるようになります.〈ZEPマガジン〉
著者紹介
- 自動車部品メーカで設備設計や自動運転技術の開発などに携わる.2019年よりインターステラテクノロジズ株式会社入社.艤装設計や電力/電装設計を担当
著書
- [VOD]定番3D CAD「Fusion360」&プリンタ 10の活用ノウハウ,ZEPエンジニアリング株式会社.
- ディジタル時代!3Dメカ設計&製作の基礎知識,トランジスタ技術 2022年9月号,CQ出版社.
参考文献
- [VOD]動画で一緒にプリント基板開発 KiCad超入門【KiCad 6対応 完全マニュアル】,ZEPエンジニアリング株式会社.
- [VOD]動画で一緒にプリント基板開発 KiCad超入門【KiCad 6対応 プロの仕上げ技101】,ZEPエンジニアリング株式会社.