鍵はレンズ選び!VR特有の撮影術
ラズパイ5×デュアル・カメラでできる
- 著者・講師:森岡 澄夫
- 主催:ZEPエンジニアリング株式会社
- 企画・編集:ZEPエンジニアリング株式会社
ピントが合ったときの円形の投影サイズと撮像素子のサイズの関係に注目
図1 VR撮影では使うレンズのイメージ・サークルの大きさが最重要.イメージ・サークルとはレンズを通してピントが合った際に得られる画像の円形の範囲のこと.画像クリックで動画を見る.または記事を読む..詳細は[VOD]ARM/GPU/FPGA/RISC-Vで作る AIカメラ&IoTエッジ開発 100の要点 |
VR撮影では,通常の撮影と異なる特別な技術が求められます.特に,レンズ選びとデュアル・カメラの活用が重要なポイントです.ここでは,ラズベリー・パイとデュアル・カメラを使ったVR撮影技術について解説します.
イメージ・サークルに注目
VR撮影では,使用するレンズの「イメージ・サークル」の大きさが非常に重要です.イメージ・サークルとは,レンズを通してピントが合った際に得られる画像の円形の範囲を指します.一般的な撮影では,このイメージ・サークルが小さくても十分ですが,VR撮影では広い視野角が求められるため,イメージ・サークルが大きいレンズが適しています.
HQカメラや魚眼レンズを使う際には,特に注意が必要です.例えば,対角,水平,垂直の各視野角を考慮せずにレンズを選んでしまうと,画像がVR撮影に適さないことがあります.Piカメラv3を改造して使用する例もありますが,これはリスクが伴い非推奨です.
デュアル・カメラでのステレオ立体視
VR撮影では,カメラを2つ使用することで,よりリアルな立体視が可能になります.これにより,3Dの映像やステレオ視距離測定など,応用範囲が広がります.ラズパイとデュアル・カメラを使ってステレオ立体視を実現するための手順は比較的シンプルです.
まず,ラズベリー・パイ OS 64bit環境をセットアップし,Python3を使用します.カメラの制御にはLibCameraライブラリを用い,画像処理にはOpenCVが推奨されます.2つのカメラを同期させるため,非同期取り込みを行い,交互にデータを取得することで,時間差を最小限に抑えます.これにより,スムーズなVR映像のキャプチャが可能になります.
実際の手順
1個のカメラを使用する場合,ラズベリー・パイとカメラを接続し,LibCameraとOpenCVを使って画像をキャプチャします.2個のカメラを使う場合は,基本的に1個目のカメラのコードを複製して,2つ目のカメラをセットアップするだけです.カメラが2台になることで,ステレオ立体視や距離測定など,より高度なアプリケーションが可能になります.
デュアル・カメラでのVR撮影は,ラズパイのような小型のシステムでも十分に可能です.この記事では,その技術的な基礎を紹介しましたが,実際の使用には多少の経験と知識が必要です.
イメージ・サークルと視野角の理解
イメージ・サークルは,ピントが合った際にレンズを通して得られる画像の円形の大きさを表します.VR撮影では,視野を広くカバーする必要があるため,イメージ・サークルが大きいレンズが推奨されます.特に,HQカメラや魚眼レンズを選ぶ際には,対角,水平,垂直の各視野角をしっかりと確認することが大切です.これらの視野角を無視すると,視覚的なひずみが発生し,VR体験が損なわれる可能性があります.
Piカメラv3を改造してイメージ・サークルを広げる方法もありますが,これは非推奨です.改造はリスクを伴い,機材の故障や映像品質の低下を招く可能性があるため,できるだけ標準的なカメラやレンズを使用することが望ましいです.
デュアル・カメラでのVR映像制作
VR撮影の次の重要な要素は,デュアル・カメラによるステレオ立体視です.2つのカメラを使用することで,左目と右目に対応した2つの視点から映像をキャプチャし,より立体的でリアルな映像を作成できます.ラズパイとPiカメラを用いることで,このような高機能なVRシステムを低コストで構築することが可能です.
カメラ2個を同期させる際には,非同期取り込みを行い,1ステップずつ交互にデータを取得することで,時間差を最小限に抑えることができます.この技術により,VR映像が滑らかになり,視聴者に違和感を与えない映像が実現できます.
VR撮影の成否は,こうした細かな技術に大きく依存しています.正しいレンズ選びとカメラの配置を行うことで,よりリアルで没入感のあるVR体験を提供できるでしょう.〈ZEPマガジン〉
著者紹介
- NTT,IBM,Sony,NECの各研究所において高性能回路IPやハイレベルシンセシスの研究,およびプレイステーションなどの製品用SoC開発に従事した後,現職にて民間宇宙ロケットの飛行制御コンピュータの研究開発に従事.FPGAや高位合成を活用している
著書
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